2010年代の音楽業界を揺るがしたニュース50選

25. コンサート業界に旋風を巻き起こした、大御所バンドたちの再結成ツアー

Kevin Mazur/Getty Images for Coachella

2016〜現在 ー  大物バンドの再結成ツアーと聞いて、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、2010年代半ばに行われたガンズ・アンド・ローゼズのラスベガス公演だろう。その数日前に行われたウォーミングアップ公演で、アクセル・ローズは足を骨折していた(松葉杖をついてステージに上がり、デイヴ・グロールから借りた玉座に座りながら彼はこう言った。「慣れればどうってことないな」)。ミュージシャンたちにとってコンサートが最大の収益源となり、過去のバンドが次から次へと再結成ツアーに出るのは、お金を自由に使える年齢に達した忠実なファンたちが迷わずチケットを購入するからに他ならない。


26.  発表済みの楽曲に修正を加えたカニエ・ウェスト

Scott Dudelson/FilmMagic

2016年2月 ー アルバム『ザ・ライフ・オブ・パブロ』の発表からわずか数時間後、カニエ・ウェストはアルバムはまだ未完成だと語り、収録曲「ウルヴス」に手を加えると宣言した。その1カ月後、ウエストは12曲すべてをアップデートした。主な変更点はプロダクションとヴォーカルの微調整だったが、完成済みの作品に手を加えるというコンセプトは、ストリーミング中心の現在では時代遅れなのかもしれない。あるいはアルバムというフォーマット自体が、今や過去のものになりつつあるのかもしれないが。




27. プリンスの死、そして彼の未発表音源をめぐる攻防

BERTRAND GUAY/AFP via Getty Images

2016年4月 ー オピオイドのオーバードーズによってプリンスがこの世を去ったというニュースは、世界中のファンを震撼させた。同時に、ペイズリー・パークの貯蔵庫に保管されている何千時間にも及ぶ彼の未発表音源に注目が集まった。遺書は残されておらず、数億ドル相当と言われる彼の作品の扱いについて、議論が過熱することは必至だった。プリンスのエステートとの間で2018年に行われた協議の結果、ソニーのLegacy Recordsが既発アルバム35枚のディストリビューションを独占的に担うことで合意に至ったものの、未発表音源の今後については不透明なままだ。


28.ストリーミング限定アルバムがグラミーのノミネート対象に

Kevork Djansezian/Getty Images

2016年6月 ー The Recording Academyは、ストリーミング限定アルバムをグラミーのノミネーションの対象とすることを発表し、その結果チャンス・ザ・ラッパーの『Coloring Book』は、フィジカル版を出すことなくグラミー賞を受賞した史上初の作品となった。「名声や成功は、全部チームとしての努力の賜物なんだ」自身の信条について、チャンスは本誌にそう語っている。その哲学は、グラミー賞が掲げる様々なルールともリンクする。




29. テイラー、キム、カニエがソーシャルメディア上で繰り広げた非難合戦

Laurentvu/Sipa/Shutterstock, Broadimage/Shutterstock, John Salangsang/Invision/AP/Shutterstock

2019年7月 ー 当初は痴話喧嘩程度に思われたテイラー・スウィフトとカニエ・ウェストの衝突は、問題となっていた「フェイマス」における彼女についての歌詞の採用をスウィフトが容認しているようにとれる電話越しの会話の一部を、ウエストの妻であるキム・カーダシアンがスナップチャットに投稿したことで一気に全面戦争へと発展した(スウィフトはその内容が正確ではないと主張し、広く拡散された「もうこの件とは一切関わりたくない」というコメントをInstagramに投稿した)。ソーシャルメディア上で交わされる言った言わないというやりとりの一部始終を、ファンはリアルタイムで見届けることになった。


30. レコード業界を震撼させたフランク・オーシャンのワンツーパンチ

Ilya S. Savenok/Getty Images

2016年8月 ー フランク・オーシャンは新作『Endless』をApple Music限定で公開し、Universal Music Groupとの契約を満了した。しかしその翌日、彼が突如発表したもうひとつの新作『Blonde』は、より「正当な」アルバムとして評論家たちから高く評価されたほか、インディー作品であるがゆえに、彼は印税の大半を自らの懐に収めることに成功した。Universalの代表を務めるLucian Graingeはこれを教訓とし、その前年に同グループが力を注いでいたストリーミング限定というディールの締結を即座に禁じた。




31. ノスタルジーの経済効果を見せつけたフェス、デザート・トリップ

Kevin Winter/Getty Images

2016年10月 ー 「大人向けのコーチェラ」と銘打たれたそのイベントには懐疑的な見方も少なくなかったが、ローリング・ストーンズ、ニール・ヤング、ポール・マッカートニー、ロジャー・ウォーターズ、ボブ・ディラン、ザ・フーらが出演したそのフェスは大きな成功を収めた。3日通し券が最大で1599ドルという前代未聞の価格設定が功を奏し、同フェスの収益はコーチェラの9400万ドルを遥かに凌ぐ1億6000万ドルに上った。

Translated by Masaaki Yoshida

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