独占|テイラー・スウィフト、ローリングストーン誌インタビュー|完全翻訳版

米ローリングストーン誌の表紙を飾ったテイラー・スウィフト(Erik Madigan Heck for Rolling Stone)

先日、米ローリングストーン誌の表紙を飾ったテイラー・スウィフト。近年もっとも核心に迫る胸中激白インタビューで、テイラー・スウィウトが、『ラヴァー』までの紆余曲折や人間関係など、すべてを語ってくれた。その全インタビュー完全翻訳版を掲載する。

テイラー・スウィフトはナッシュビルにある母親の家のキッチンに、笑みを浮かべながら、これぞテイラー・スウィフトという風貌で駆け込んできた(クラシカルな真っ赤なリップを施して)。「髪をピンクに染めるから、誰か手伝って」 しばらくすると、彼女は全身ピカピカのマニキュアやスニーカー、ボタンダウンのストライプと調和していた。すべてニューアルバム『ラヴァー』のパステル調のテイストにぴったりハマっている。前回のアルバムの際の、ブラックレザーの戦闘モードのテイラーからバトンを受け継いだのだ。黒御影石のアイランドキッチンの周りはいつも通り穏やかで、スウィフトの母親、父親、弟が通り過ぎていく。母親が飼っている2匹の犬、小さいのと大きいのが一匹ずつ、訪問者に飛びかかってペロペロ舐める。どこにでもあるような、29歳の若者が週末に両親の家を訪ねるという光景だ。数メートル先のホールから漂う熱気を除けば。

風通しのいいテラスでは、うっとりしたり、涙を流したり、ガクガク震えたり、いまだに信じられないと言った面持ちの113人のファンが、スウィフト教の聖なる儀式であるシークレットセッションの開始を待っていた。8月上旬のとある日曜の午後、彼女はこれからファンの前で、この時点では未発表の7枚目のアルバムをたっぷり解説つきで披露する。しかも手作りクッキーのおまけつき。セッションの直前、スウィフトは母親の書斎(娘いわく、母親が「Googleを操る」部屋)で数分おしゃべりした。部屋の黒い壁にはモノクロのクラシック・ロックの写真が飾ってある。その中にはブルース・スプリングスティーンや、当然ながらジェームズ・テイラーの写真の他、スウィフトとクリス・クリストファーソンの2ショットや、母親のお気に入りのバンド、デフ・レパードと共演したときの写真など、最近のものもあった。

部屋の隅には、10代の頃にスウィフトが使っていたギターがある。彼女の代表曲のいくつかは間違いなくこのギターで作られたはずだが、どの曲かは思い出せないと本人は言う。「曲ができたとき、『この瞬間を絶対覚えておこう』なんて、ちょっと変でしょ」と言って、彼女は笑った。「我が聖なる音楽で清められし、このギターよ!」

シークレットセッション自体は、その名が示す通り完全極秘で行われた。Instagramに投稿されたいくつかの写真にグラスがチラッと写っていたことから、彼女が白ワインを飲んだことがわかる。ファン1人1人とおしゃべりしたり、写真を撮ったりしながら、彼女は明け方5時まで過ごした。その5時間後には、スウィフトのナッシュビルのコンドミニアムでインタビュー再開。2012年のローリングストーン誌の巻頭インタビューを行ったときとまったく同じ場所だった。茶目っ気たっぷりの内装は7年前とほぼ変わらない(ひとつ変わった点といえば、前回我々が腰かけたカウチの代わりにビリヤード台が置かれていたことか)。いわば、昔のテイラーのタイムカプセル。隅っこには苔でできた巨大なウサギが健在だし、リビングルームには人型をした鳥かごもある。ただし鳥かごからの眺望は、遠くに広がる緑の丘ではなく、人工的な新築マンションになってしまったが。今日のスウィフトは裸足にライトジーンズ、ブルーのボタンダウンのシャツのウエストイン。髪は後ろでまとめ、メイクは最小限にとどめていた。

この3年間のテイラー・スウィフトをどう総括すればいいだろう? 2016年7月、スウィフトがカニエ・ウェストの「Famous」に不満を表明した後、キム・カーダシアンは全力で彼女をつぶしにかかり、ひそかに録音したスウィフトとウェストの電話の会話を公開した。切れ切れの音声からは、「俺とテイラーはいまだにセックスしてるかもよ」という歌詞にスウィフトが同意しているのが聞きとれる。その後につづく、彼女のご機嫌を損ねた歌詞――「俺があのビッチを有名にしたんだ」――についての彼女のリアクションは聞き取れない。後で本人も説明するように、彼女の側にも言い分は山ほどある。ともかく、たちまち大反発が起きた。いまだ完全には収まっていない。その年の後半、スウィフトは2016年の大統領選挙であえて支持政党を表明しないことにしたが、何の足しにもならなかった。こうしたことを全て踏まえたうえで、彼女は、激しく、ヒネリを利かせ、純然たるラブソングで相殺したインダストリアルポップ調の『レピュテーション』をリリースし、スタジアムツアーで爆発的な成功を収めた。そしてその間どこかのタイミングで、現在の恋人ジョー・アルウィンと出会った。『ラヴァー』のいくつかの収録曲から判断するに、真剣な交際のようだ。



米ローリングストーン誌 最新号表紙
テイラー・スウィフト 2019年8月1日、ロンドンにて
撮影:Erik Madigan Heck ヘア:Daniel Martin(Bryant Artists) メイク:Andrew Gallimore(CLM Hair & Make-up) ネイル:Jenny Longworth(CLM Hair & Make-up)スタイリング:Leith Clark(the Wall Group) 衣装提供(ジャケット、シャツ):Gucci

『ラヴァー』はスウィフトの中でも最も成熟したアルバムだ。サウンドと登場人物のバランスを取り戻したことで、この先10年の音楽人生に新しい扉が開けた。また、2012年の『レッド』のような音の多様性への回帰でもある。セイント・ヴィンセントが参加したウーバーバップの「クルーエル・サマー」に始まって、どうしようもないほど切ないカントリー調の「スーン・ユール・ゲット・ベター」(ディキシー・チックスと共演)、さらに「シェイク・イット・オフ~気にしてなんかいられないっ!」を思わせるポップな「ペーパー・リングス」と、多岐にわたる。

Translated by Akiko Kato

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