2010年代の音楽業界を揺るがしたニュース50選

12.  ケンドリックよりもマックルモアを選んだグラミー、揺らぐその権威

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2014年1月 ー グラミー4冠を達成したマックルモアは、受賞の数時間後に同じくBest Rap Album部門にノミネートされていたケンドリック・ラマーに次のようなメールを送った。「俺は君に獲って欲しかったし、君が獲るべきだったと思ってる。俺がこの賞を貰っちまったことはおかしいし、何かが間違ってる」そのことが明らかになると、彼は大きな批判にさらされた。ファンに向けたソーシャルメディアへの投稿で、マックルモアはラマーこそが「Best Rap Album賞にふさわしい」と述べたが、この出来事はアーティスト自身がメディアよりも強大な影響力を持ちつつあること、そしてグラミーに代表される伝統的アワードの権威が揺らぎつつあるという事実を浮き彫りにした。


13. 6秒間のカバーで世界を虜にしたショーン・メンデス

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2014年夏 ー カナダ生まれのティーンエイジャー、ショーン・メンデスが動画アプリVineに投稿したジャスティン・ビーバーやエド・シーラン等の6秒間のカバー動画は、瞬く間に5億回という驚異的な視聴回数を記録した。2013年にある敏腕マネージャーにその才能を見初められた彼は、以降数年間でスターダムを駆け上がった。




14. 5億人のiTunesユーザーに無差別に配信されたU2の新作

Marcio Jose Sanchez/AP/Shutterstock

2014年9月 ー U2の新作『ソングス・オブ・イノセンス』を無作為に選ばれた5億人のiTunesライブラリに自動的に加えるという前代未聞のマーケティング手法は、思わぬ結果を招くこととなった。Appleが巨額の金をつぎ込んだPRスタントは、技術面での問題に直面したほか、ユーザーたちから「スパム以下のやり口」と批判され、同社は発表から1週間経たずしてアルバムの消去方法を公開する羽目になった。しかしジミー・アイオヴィンは後に、そのギミックに隠されたメッセージについてこう語っている。「ロックの求心力がすっかり失われている今、彼らはセオリーに抗おうとした。そのためなら、使えるツールは何であれ使うべきだ」


15. 業界における力関係に疑問を呈したケシャとドクター・ルークの法廷闘争

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2014年〜現在 — 2014年、シンガーのケシャは「性的・肉体的・精神的苦痛を与えられ、死の寸前まで追い詰めれらた」 として、彼女のプロデューサーであるドクター・ルークを告訴し、彼はこれを真っ向から否定した。非難の応酬となった裁判の経過は大々的に報じられ、テイラー・スウィフト、レディー・ガガ、ケイティー・ペリーらはそういった問題に対する自身の考えを表明した。またこの裁判は、音楽業界全体における男女の力関係に疑問を投げかけるきっかけとなった。


16. ストリーミングのビジネスモデルに待ったをかけたテイラー・スウィフト

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2014年11月 ー Spotifyの無料ユーザーの扱いに異議を唱える意味で、テイラー・スウィフトは自身の全作品を突如同プラットフォームから取り下げた。それに伴い、彼女は次のようなコメントを発表した。「音楽は芸術であり、芸術とは重要で稀有なものです。重要で稀有なものには価値があります。そして価値があるものには、対価が支払われるべきなのです」2017年には彼女の作品が再びSpotifyで聴けるようになったが、その空白期間は業界の人々に、ストリーミングが主流の時代にアーティストが持ち得る影響力の大きさを悟らせた。

Translated by Masaaki Yoshida

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