大村雅朗が40年前に志向していたクールなサウンド、プロデューサー木﨑賢治と語る



田家:今日の8曲目、今月最後の曲です。吉川晃司さん「You Gotta Chance ~ダンスで夏を抱きしめて~」 。

木﨑:詞は麻生圭子さんっていう、その前はシンガーソングライターの子が詞を作りたいと僕んとこにきて。それ吉川晃司に詞作ってみる?って何個か作ってもらって。この詞がだいぶ完成されたんで、この詞にNOBODYにメロディをつけてもらった。このサントラ盤を作るにあたっていろいろあって。

田家:大村さんのプロデュースでしょ?

木﨑:はい。最初『すかんぴんウォーク』っていう映画を作ったんですよ。この前亡くなっちゃった大森一樹さん監督でやったんですけど。そのときに映画の人たちにサントラ、大村さんを推薦したんですよ。だけど時間もかかるし、お金もかかるかもしんないんですけど、みたいにちょっとネガティブなこと言っちゃったら外されちゃった。あまり初めての人に本当のことは言わない方がいいなと思って。いいことばっか言った方がいいんだなと思って。次の映画のときは大村さんでやらせてもらえることになった。自分は大村さんと会った頃からすごい才能だなと思ってて。坂本龍一さんみたいになれる人だなと。本当はアレンジとかいろんな人のやるんじゃなくて、自分の好きな音楽をやるアーティストになった方がいいんじゃないかと思ってたんですよね。それで大澤のツアーにも来てもらったんです、最初のデビュー。キーボード。

田家:そうなんですか。

木﨑:だからツアーで1回、大村さんもライブやったんですよ。松武さんと一緒に。ドラムは上原’ユカリ’裕、ベースは吉田建、ギター沢田研二と合体してやったんですけど、やっぱり大村さんはツアーは嫌だったみたいで。そのあとツアーはやらなくなったんですけど、このサントラ盤を作ってって。1人で黙々と自分が作りたいように作ったんだと思うんですけど。これが大村さんオリジナル最初みたいな感じで。よく天気予報とかでもかけてくれたり。歌のない大村雅朗さんの最初の頃の作品かもしれない。

田家:そういう坂本龍一さんと並んで名前が出るような人になってほしいっていう木﨑さんにとって、昨今の大村さんの再評価はどんなふうに受け止められてますか。

木﨑:やっぱり長く伝わるものって何かと思ったら、クールなものですね。あまりホットなものは人間って飽きちゃうのかなと思って。時代が下っていくとどうなってるかっていうと、どんどんクールな物になってるんですよ。歌い方も「カローラIIにのって」っていう曲を小沢健二さんが歌っていたけど、あのメロディもほとんど吉田拓郎みたいだったんだけど、もっとあっさりしてるんですよ。それが時代ってもので、BUMPの藤くんもガーッて歌ってるけどクールなんですよ。どんどんどんどんクールになって、アレンジもどんどんどんどんクールになっている。あの時代から今に合うぐらいクールなのを作っていた大村さんは今でも通用すると、自分なんか聴いてると思う。音色がちょっと今の時代と合ってない感じはありますけど、それを再び音を変えればアレンジ的なものはほとんどそのまま使えるんじゃないかな。40年前だけど古くなく感じるんですよね。

田家:そういうアルバム木﨑さんがプロデュースされるっていうのがあるといいですね。

木﨑:音を直してもう1回出したいぐらい。マスタリングもしなくちゃ駄目だと思うんですけど、音色、ドラムの音をもうちょっとこういうふうにしたいとか、キックとかベースの音をこうしたいなとかちょっとあります。

田家:この先にある2023年2月10日の大阪フェスティバルホールに向けて思ってらっしゃることで終わりましょうか。

木﨑:大村さんって、どっか縁の下の力持ちって感じがあって、音楽を聴く人にとっては一番聴いちゃうのはメロディと詞とボーカル、その次に聞こえるのは洋楽だったらドラムとベースなんですよね。そこがよければ大体いい曲になると思うんです。サウンドプロデュースは背景作りだと思うんですね。大村さんがやった歌の背景作りっていうのは、すごく緻密で無駄がなくて、計算され尽くしています。「そして僕は途方に暮れる」もあのオケがなかったら、本当に貧しいものになっちゃうはずだった。そういう大村さんの役割を見ていただけたら、聞いていただけたらって思いますね。


左から、田家秀樹、木﨑賢治

Rolling Stone Japan 編集部

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