大村雅朗が40年前に志向していたクールなサウンド、プロデューサー木﨑賢治と語る



田家:大村さんのアレンジって、その人の個性がものすごく際立ってる感じがあるでしょ? ストリングスを生かしたタイプの曲と、ピアノのフェミニンさが生きてる曲とか。これはもう大澤誉志幸さんとのコンビじゃなかったらこういう曲にはなんない。

木﨑:そうですよね。大村さんも他のアーティストのアレンジはもうちょっと J-POPっぽいっていうか、メロディー中心のストリングスとかもあるんだけど、大澤と吉川は結構リフっぽい作りをしてるのがすごいなと思って。シティポップみたいのもできるけど、共通しているのは全部洋楽のエッセンスがあるってこと。松田聖子さんの曲もそんな洋楽っぽくはできないんですよ。コードがいっぱい変わっていくから。だけど苦労して、なるべくコードがバンバン変わってるように見えないようにいろいろやってたんだなと思って。それで音楽的で、豊かな感じがするんですね。音が少ないのに。だからちょっとホットに歌っても、演奏がクールだったら、いい感じの雰囲気になるんですよね。大澤のこの歌い方でオケが暑苦しかったらすごくチープな感じになっちゃうんじゃないかな。



田家:1984年9月発売吉川晃司さん「LA VIE EN ROSE」。 この曲は作詞が売野雅勇さんで、作曲が大澤誉志幸さん、編曲が大村雅朗さん。

木﨑:大澤のアルバムを作ってたときに、ハードボイルドな世界でやりたかったんだけど、売野さんの作ったこの詞がちょっとリゾートっぽい感じがあって。吉川は水泳をやってたし、これ合うんじゃないかなと大澤と話して、これ吉川で使いたいんだけどっていってコンバートして。

田家:吉川晃司さんはシングル盤が4曲ずっと続いて、アルバムも1枚目2枚目も大村さんでしょう。吉川さんには、大澤さん大村さんのコンビが合うっていう。

木﨑:吉川も大村さんのサウンドが合うなと思って。クールな感じが。曲はいろんな人とやればいいかなと思っていて。その中でたまたまこの曲が吉川が歌ったらいいかもと思って。思いつきっていうか。僕は全体のことしか言わないんで。リフがある曲だとか、こんな感じとか。それをもうちょっと技術的にも詰めていったのが大村さん。

田家:なるほどね、この曲のあの曲のって言わなくても、こういう感じって言えば大村さん同じようなものをちゃんと出してくれた人。

木﨑:そうですね。最初にサウンドコンセプトを話し合って決めてから制作に入るのでお互い向かう方向は一緒だから話も早いし。

田家:向かう方向が一緒だったっていうのがいいですね。木﨑さんが選ばれた今日の最後の曲は、吉川晃司さんの4枚目のシングル「You Gotta Chance ~ダンスで夏を抱きしめて~」なんですが、これは映画「You Gotta Chance」の主題歌でロングバージョンというのがあって、大村さんプロデュースのアルバムがあった。その中からお聞きいただきます。

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE