大村雅朗が40年前に志向していたクールなサウンド、プロデューサー木﨑賢治と語る



田家:木﨑さんが選ばれた今日の5曲目、大澤誉志幸さんで「e-Escape」。2枚目のシングル。デビューアルバム『まずいリズムでベルが鳴る』の1曲目でありました。これもアルバム全曲が銀色夏生さんの作詞で、全曲アレンジが大村さんでした。アルバム全曲お願いしてる。

木﨑:そうですね、気に入っちゃうと同じ人とやった方がより深く話し合えるし、どんどん良くなっていくから、大村さんとずっとやりたいなと思って。この曲は特に大村さんが活躍したと思って。イントロからAメロの中にも入ってるリフを大村さんが考えて曲ができてる。僕リフが好きなんですけど、それでそういう話をして。曲は1小節ずつの8ビートだったんだけど、2小節に渡ってリフを作ってくれて。今の洋楽にも通ずる感じが、あのときから大村さんにあるんだなと思って。

田家:はい。

木﨑:改めて聞いてみると、コードがあまり入ってないんですよね。だからギターとベースのユニゾンのリフみたいなのに、音程のない楽器をいっぱい入れているんですね。あれで派手さは出している。普通の日本のアレンジャーはコードで埋めていくんですよ、いっぱい。それで隙間がなくなっちゃっている。それとこの曲を聞いて、大村さんって昔からこうだったんだと思うのは、生のドラムとか一切なくて、ほとんど YMO でやってた松武秀樹さんとやっている。譜面を書いてきて松武さんに渡すらしいんですよ。それを打ち込んで始まっていく。

田家:なるほど。

木﨑:もう一つ、今iPhoneで聞くのにも適した音になってると思ってて。音が短いんですよ。長い音が入ってるとiPhoneのスピーカーで聞くと歌の邪魔になってくんです。最近の曲ってみんなスタッカートの曲が多くて、エド・シーランの「シェイプ・オブ・ユー」とか短い。ドラムも808っぽい感じで、スネアとかも短いんですよ。バーンとか言わなくて、昔のハードロックみたいじゃなくてに逆に短い。ハットも短いんですよ。そうすると歌とかも潰れないでよく聞こえる。これらの曲って、スネアの音がちょっとチープな感じがしちゃうんだけど、それを今っぽい音に置き換えたらこのままでいい感じになるくらい素晴らしいはいアレンジで。大村さんの才能はすごいなってあの頃も思ってたけど、あの頃はJ-POPのコードがいっぱい変わっていく音楽だけど、プリンスみたいにとか誰みたいにとかいろいろ言って無茶振りしてたなっていうのが後になるとわかるんだけど。そこの間をうまく埋めて綱渡りみたいなアレンジしてくれたんだなって。いまならわかるんですけど、すごい洋楽のエッセンス。オシャレでクールで、そこに J-POP をうまく合わせて。そこは本当になかなかいないサウンドメーカーっていうか。

田家:大村雅朗マジックがこうやって解明されていくという話だなと思って聞いておりましたが、木﨑さんが選ばれた6曲目。これも大澤誉志幸さんで「CONFUSION」。

Rolling Stone Japan 編集部

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