ザ・キュアーのロバート・スミス、自身のアルバム14作を振り返る

2001年撮影のロバート・スミス(Photo by Tim Roney/Getty Images)


14.
『4:13 Dream』
2008年
4:13 Dream

キュアーの13枚目のアルバムの構想を練りはじめた当初、ロバート・スミスは13曲ずつを収録した2枚組アルバムにするつもりだった。2006年から2008年の間にバンドは33曲をレコーディングしたが、曲をふるいにかけていたスミスは1枚で十分だと結論付けた。度重なる遅延の末、『4:13 Dream』は2008年10月27日に発売された。その数ヶ月前、作品の完成に向けた最終準備のためにスタジオ入りしていたスミスは、本誌の取材に応じてくれた。



スミス:完成が延々と遅れてしまってるけど、僕は前向きに捉えるようにしてる。準備が整っていないのに、無理に出すのは良くないからね。個人的には、締め切りに追われながら仕事をするのは好きなんだけどさ。僕はこのアルバムが長く人々の記憶に残ることになると信じてるから、納得がいくまでとことんやると決めてるんだ。でもあえて宣言しておくよ、僕はこのアルバムを誕生日の4月21日に完成させる。

収録曲の選択にはすごく苦労したよ。7分を超えるダウンビート系のトラック、対照的にすごくアップビートな曲、その中間にあるようなものまで、実にバラエティ豊かだったからさ。この33曲には、ザ・キュアーのなんたるかが全部詰まってると思う。80年代に出した『Kiss Me〜』にも、そういうところがあったかもしれない。自分たちの持ち味を全部出して、最後に全体のカラーを統一するっていうプランだったんだけど、優先事項について意見の食い違いがあったんだ。かつてのファンを一気に呼び戻すような大衆受けする作品にして、実験的なものはライブの場でやるべきだっていう声もあった。その一方で、「そんなのはクソ食らえだ。とにかく暗くて重たいやつだけを収録して、他の曲は映画のサントラなり何なりにくれてやればいい」っていう意見もあった。

曲は全部同じスタジオで録ったんだ。そのうちの75パーセントくらいは一番最初のテイクを使ってる。いい感じの緊張感があるからね。後から編集で手直ししたり、テンポを変えたり録り直したりしたものもあるけど、大半はデモ段階のものをそのまま使ってるんだ。

今作の一番の魅力は、テンポの遅いものや早いもの、そのどちらでもない曲が混在しているところなんだ。使った音色やサウンドも厳選されてる。33曲ある中で、使ったキーボードの音色は4つだけなんだ。僕が弾いたのもベーシックな楽器ばかりだし、アンプも使ったのはせいぜい3台くらいだ。それを全部同じ空間でレコーディングした。曲自体はどれも風変わりでまとまりがないようにも思えるんだけど、少なくともサウンドには一貫性があるんだ。

レコーディング期間中は誰もスタジオに立ち入らせない、それが僕らの決めたルールだった。相手が誰であろうと関係なくね。僕ら4人以外で出入りしてたのは、何年か一緒に仕事をしてるエンジニアのKeith Uddinだけだった。ギャラリーも一切受け付けなかった。互いの嫌な部分も見えてくるんだけど、それも全部受け入れた上で付き合ってた。意見の対立はしゅっちゅうだったけど、そういう環境だったからこそ、レコーディングはすごく楽しかった。僕らはもう互いに怒鳴ったりしないんだ、そういうのって新鮮だよ。

曲の中には80年代に作ったデモが2つ、あと90年代のやつが1曲ある。何年か前、過去のアルバムの再発盤に収録するボーナストラックを用意してた時に、僕はとっておいた素材を片っ端から聴いていったんだ。何百本ものテープを聞き返すうちに、「これはいいかもしれない。ライブ映えしそうだ」と思える曲がいくつか見つかった。そのうちのひとつは典型的な80sサウンドなんだけど、どの曲かはきっとすぐに分かると思う。でも今回のアルバムにすごくハマッたんだよ。『The Head on the Door』のセッションの時に作った曲で、あのアルバムらしい80sサウンドなんだけど、それは別に悪いことじゃないと思うんだ。僕たちが築き上げてきたものの一部なんだからさ。仮だけど、今はその曲を「Kat 8」って呼んでるんだ。

アルバムに明確なテーマはないけど、歌詞の中には現代社会を意識してる部分もある。曲のひとつはサム・ハリスの『The End of Faith』っていう、数年前に読んだ宗教団体の不条理についての本に触発されてる。そういうテーマを、あくまでポップスっていう形で表現してみたかった。アーティストの中には本質をロクに理解もせずに社会問題について歌う人がいるよね、僕だって似たようなものなのかもしれないけど。だから僕はそういうことについて、普段はあまり語らないようにしてるんだ。

今のキュアーは過去20年、あるいは『Disintegration』以降で最高のラインナップだよ。スタジオでは電気が走るような化学反応が起きていたし、それが作品にも現れてると思う。今の僕は、昔よりもずっと高い基準を設けるようになった。ザ・キュアーのファンなら、きっとこのアルバムを気に入ってくれると思うよ。


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Translated by Masaaki Yoshida

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