ザ・キュアーのロバート・スミス、自身のアルバム14作を振り返る

4.
『Pornography』
1982年
Pornography

「僕らが死に絶えても、何ひとつ変わりはしない」という歌詞で幕を開けるザ・キュアーの4作目は、前作にも増してダークであり、英Rip It Up誌は「イアン・カーティスが能天気に思えるほど陰鬱」と評した。この頃からスミスは髪をムースで固め、口紅をひくようになり、イメージがないというバンドに対する批判は聞かれなくなった。



スミス:『Pornography』の制作中は酒とドラッグに溺れていて、バンドは崩壊寸前だった。僕は依存ぶりが酷かったから、当時の記憶にはあまり自信が持てないんだけどね。

汚らわしさを出したくて、何曲かはトイレでレコーディングしたんだ。そこのトイレはマジで汚くておぞましかったからね。サイモンは何ひとつ覚えてないらしいけど、僕は服を着たまま便器に座って歌詞を考えてる時の写真を持ってるんだ。悲劇としか言いようのない一枚さ。

当時はとにかく俗悪なものに浸っていて、それがメンバー全員の精神状態に悪影響を及ぼしてた。ダークなムードを作品に反映するために、えげつない映画や写真をやたら集めてた。今になって思えば、あんなことに意味があったのかなって考えてしまうけどね。僕らはまだ20代になったばかりで、世の中にはとことん下劣で悪い人間がいると知って愕然としてたんだ。

バンドのファンの中には、他のどのアルバムよりも『Pornography』に思い入れを持ってくれている人もいるけど、発売当初はとにかく評判が悪かった。ライブ中にオーディエンスが会場を出ていったり、ステージに物を投げつけてきたりするのは、きまってこのアルバムの曲を演奏している時だった。僕らの演奏が下手だったこともあるんだろうけどさ(笑)。

このアルバムにはあまりいい思い出がないんだけど、僕らの作品の中でもベストのひとつだと思うし、極端な状況に身を置かなければ生まれ得なかったアルバムだと思う。キュアー史上最も強烈で情熱的なレコードだって言ってくれる人もいるよ。でも、こんなアルバムばかりを作り続けるわけにはいかないんだ、身がもたないからね。


※Spotifyはこちら

Translated by Masaaki Yoshida

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