米陸軍エリート部隊、上層部がひた隠しにするタブーの正体

グリーンベレー隊員マーク・レシカー(左と、右の写真のタトゥーのある方)はそれぞれの幼い娘が目撃する中、麻薬の効果で激化した口論の末、親友で同じく特殊部隊員のビリー・ラヴィーン(一番右)に射殺された。数年後にはラヴィーンも胸を撃たれて死亡し自分のトラックの荷台で発見された。特殊部隊内で薬物絡みの事件が連続する中、フォートブラッグで麻薬を密売していたとして当時取り調べが行われていた。(Courtesy of Laura Leshikar, 2)



対テロ特殊部隊、デルタフォースとは?

ネイビーシールズは近年あらゆるスキャンダル見舞われて来たが、デルタフォースは12月のラヴィーンの不審な死まで数々の薬物乱用事件の責任を逃れて来た。実際、正式名称を第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊といい、戦闘適応グループの名でも知られるこの部隊が引き起こした事件についての記事を探すには相当な時間を要するだろう。

JSOCの予算は公開されていないが、一般的な特殊部隊員の訓練に1人当たり1〜2百万ドルかかっていると言われており、デルタフォースやシールズ・チーム6などの特殊任務部隊のレベルに達する頃にはさらに莫大な金額が一人一人に投資されている。隊員数も明かされていないが、イラク戦争にも参加した元デルタフォース所属の大佐が2年前、約250人の隊員に加え、支援部隊が2000人いると著者に話している。大佐は選抜に関わっており、高度な射撃技術だけでなく、芸術的才能も持ち合わせている内向的な性格の人材を探し、楽器を演奏出来る者や絵を描く者を選んだ。矛盾しているように聞こえるが、「チームプレイヤーの傾向にない人間」を基準として挙げた。

パブリックドメインとして公開されている数少ないデルタフォース隊員の写真は個人を特定出来ないよう顔が黒く塗り潰されていたりぼかしが入っていたりする。アメリカ的軍国主義の象徴、特殊部隊へのカルト的信仰の中で、目を覆う黒い線は後ろ暗い歴史を物語っている。長髪に伸びた顎髭、首に巻いたチェック柄のクーフィーヤから始まる隊員像は、顔にかかったモザイクで完成される。Tier 1所属軍人たちは存在をなかったことにされるほど必殺部隊の中で高い地位まで上り詰めた、もはや幽霊なのだ。

しかし、彼らの顔や名前、よく乗っているのが見られる特大のトラックは、フォートブラッグ周辺に住む人たちの間ではよく知られている。サザンパインズのO’Donnell’s Pubなどのバーでバイカー的な装いに顎髭、タトゥー、筋肉、つばがボロボロの日焼けした野球帽、そして隠し持った拳銃が加えられた典型的な非番軍人の姿を見つけるのは容易だ。「この地域にはデルタフォース隊員が多く住んでいます」とヴァスのバラード刑事は語る。「いい人もいます。優しい、普通の人たちです」。しかし、「自己陶酔的」で何をしても許されると思う傲慢さが滲み出る「問題行動」を起こす者もいると彼女は言う。

ヴァス唯一の常勤刑事のバラード氏はビリー・ラヴィーンと面識がなかったが、共に殺されているのが発見された44歳の元軍人ティモシー・デュマスとは知り合いだった。

実際にはただの兵站係だったが、「特殊部隊員を自称」していたと彼女は言う。「強烈な人物でした。敵意を剥き出しにしていて、何か違法なことや犯罪組織に関わっていそうだという印象を受けました。手に入る銃やパーツの話をしていたので、銃絡みの何かではないかと思いました」

当時、バラード氏は海軍を辞めたばかりで、刑事はおろか警察官にもなっていなかった。2013年10月のある夜、コンセントを直しに来たデュマスに言い寄られていることにバラード氏はすぐに気がついた。「夫がどこにいるか詮索して来ました」、今は別居していると伝えると「もし消して欲しければ応じると言って来ました。一生関われないように。冗談を言っているようには聞こえませんでした。彼は本気でした」

笑い飛ばすふりをしたが、デュマスが金物屋に部品を買いに出ている間に隣人を呼び、側にいてもらった。寝室からグロックを持ち出し、ソファのクッションの下に隠した。「あまり人に威圧されることないのですが、彼は恐ろしかったです」と彼女は言う。

LinkedInに載っているデュマスの写真にこれといった特徴はない。ウィスカー加工のされたジーンズに縦縞のシャツを着た坊主頭のがっしりとした体格の黒人中年男性が夜、どこかの駐車場の前で立っている姿が写っている。表情は硬く、眉は上がっており、カメラをじっと見つめる目がフラッシュで赤くなっている。

2016年に軍を離れ、一時ファイエットビルでナイトクラブを経営していたが、法的問題が絶えなかった。税を払っていない酒の所持や借用品の返却拒否、未成年者への酒の販売で何度も逮捕された。しかし、全て不起訴に終わった。

デュマスの妻によると、ナイトクラブは「もう存在せず、建物は周辺地域ごと取り壊され、新しい建物が建って」いる。一面に松葉が落ちた庭の中に建つ、窓がクリスマスリースで飾られた美しい平屋の扉が開くことはなかった。インターフォン越しに「他の誰しもと同じように何も知らない」、彼女とデュマスは「違う人生を歩んでいる」と話した。

新型コロナウイルスがアメリカに上陸した2020年初め、警察沙汰は増えるばかりだった。3月28日、彼が他人の家に発砲したとしてファイエットビル警察が現場に駆けつけた。重罪だったが、これでも起訴されなかった。

「罪を問われなくても事件が起こらなかったことにはなりません」とバラード刑事は言う。フォートブラッグ周辺の群の刑事司法制度は軍人たちを特別扱いしているのではないかと彼女は考えている。「実際に見たことがあります。クラスA制服を着込んでお高くとまった彼らが出頭すると、『ああ、もう帰っていいですよ。お国のためにありがとうございます。良い一日を』と同情を得るんです」

Translated by Mika Uchibori

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