米陸軍エリート部隊、上層部がひた隠しにするタブーの正体

グリーンベレー隊員マーク・レシカー(左と、右の写真のタトゥーのある方)はそれぞれの幼い娘が目撃する中、麻薬の効果で激化した口論の末、親友で同じく特殊部隊員のビリー・ラヴィーン(一番右)に射殺された。数年後にはラヴィーンも胸を撃たれて死亡し自分のトラックの荷台で発見された。特殊部隊内で薬物絡みの事件が連続する中、フォートブラッグで麻薬を密売していたとして当時取り調べが行われていた。(Courtesy of Laura Leshikar, 2)



フォートブラッグで出た初めての「死者」

最初に死者が出たのは2020年1月、テキサス州出身の19歳の男性の腐敗が進んだ死体が彼の寝床で発見された。陸軍は死因を発表しておらず、1年が経過した今でも調査は続いている。3月にオハイオ州出身の若いグリーンベレー訓練生が兵舎で「反応がない」状態で発見された件についても同様だ。5月下旬には落下傘部隊の仲間6人とキャンプをしていたカリフォルニア州出身の21歳の兵士が斬首されたが、この事件についてもまだ誰も逮捕されていない。11月に寝床で「反応がない」状態で発見されたテキサス州出身の24歳の兵士についても陸軍はそれ以上の詳細を発表していない。この1年でフォートブラッグでの自殺者は21人に上り、他のどの米軍基地よりも多い。

フォートブラッグの狂った一年はラヴィーンとデュマスの死体の発見から3週間後に起きた事件で締めくくられた。特殊部隊所属の31歳の衛生兵キース・ルイスが元空軍兵の臨月の妻サラ・ルイスさんを射殺した。2016年にサラさんに暴行を加え、ファイエットビル警察と武装した状態で睨み合いになった時に息子は陸軍から解雇されるべきだったとキースの母、リンダ・ルイスさんは著者に話した。「息子は私に電話して来て『母さん、今頭に銃を突きつけてる。サラを傷つけてしまったし、キャリアは終わった』と言いました。私が長い時間をかけて話すとようやく銃を下ろしてくれました」。その後「問題は特に何もなかった」とリンダさんは言う。

カンバーランド郡は証拠不十分のため不起訴にしたが、「懲戒処分」と、薬物依存症及び結婚カウンセリングの受診の指示は受けたと、ルイスが所属する第1特殊部隊のスポークスマン、ダン・ルサール少佐は述べた。

問題は解決しなかった。サラさんの母、ロンダ・フィリップスさんによるとサラさんは2020年に少なくとも2度、最後は12月11日に身の危険を感じているとルイスが所属する部隊に報告している。「大量に酒を飲みステロイドを使っていたので兵舎に戻すよう部隊に連絡しましたが、全く対応してもらえませんでした」

「12月11日にそのような問い合わせがあったかまだ確認出来ていません。今その作業を進めています」とルサール少佐は言う。

わかっているのは12月22日にサラさんが911に通報し隣人の家に避難したということだ。ルイスは片手で3歳の娘を抱え、もう片方の手で銃を構えながら外まで追いかけた。サラさんが隣人の家の扉を叩くと彼女に向けて発砲した。凶弾はサラさんが後ろに身を隠そうとした隣人の車を破壊し、死ぬ間際に娘が生まれた。イザベラと名づけられる予定だったその子が生き延びることは叶わなかった。キースが降ろしたのか自分ですり抜けたのか、3歳の娘は駆けつけた警察官の一人に飛びついた。複数人の警官が銃を向けながら武器を下ろすよう叫ぶと、ルイスは銃を自分の額に当てそのまま撃ち抜いた。

「フォートブラッグは”爆破”されなければいけません」、つまり隅々まで調べられなければいけない、とサラさんの叔母タミー・デ・ミルザさんは言う。彼女が持っている写真にはルイスのクローゼットから発見された使用済みの注射器や、深刻な気分障害を引き起こす違法アナボリックステロイドのプロピオン酸ドロスタノロンや酢酸トレンボロンの小瓶が入った大きな入れ物が写っていた。

真実が知りたい遺族は彼女だけではない。「フォートブラッグでこんなことが起きて、それについて誰も知らないなんておかしいです。絶対に何か隠しています。そう思えてなりません」と殺害されたラヴィーンの父、ビリー・ラヴィーン・シニアさんは語る。


(写真)アメリカ国内最大の基地フォートブラッグが指揮するのはデルタフォースやグリーンベレーなど、陸軍の最精鋭部隊。アフガニスタンやイラクとの終わりの見えない戦争を一身に背負ってしまっている彼らは「戦闘による心的傷痍や精神的損傷」だけでなく酷い外傷性脳損傷にも苦しんでいる。(Photo by Airman 1st Class Clayton Cupit/U.S. Air Force)

Translated by Mika Uchibori

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE