米陸軍エリート部隊、上層部がひた隠しにするタブーの正体

グリーンベレー隊員マーク・レシカー(左と、右の写真のタトゥーのある方)はそれぞれの幼い娘が目撃する中、麻薬の効果で激化した口論の末、親友で同じく特殊部隊員のビリー・ラヴィーン(一番右)に射殺された。数年後にはラヴィーンも胸を撃たれて死亡し自分のトラックの荷台で発見された。特殊部隊内で薬物絡みの事件が連続する中、フォートブラッグで麻薬を密売していたとして当時取り調べが行われていた。(Courtesy of Laura Leshikar, 2)



口論の末に親友を射殺

その後の出来事には未だ説明がつかない。側から見れば正気を失ったようにしか見えなかっただろう。レシカーの死が勤務中の出来事だったか陸軍は取り調べを行い情報をかき集めたが、詳細は依然謎のままだ。午後1時頃、まだ帰りの車を走らせている最中にラヴィーンはレシカーの様子がおかしいとローラさんにメッセージを送った。後をつけられている、車に盗聴器が仕掛けられていると信じ込んでいた。しかし、ローラさんがFaceTimeで電話をかけると特に変わった様子はなかったため、からかわれているだけだと結論づけた。「あの2人はいつもふざけてばかりいたので、真剣に取り合えません」

午後4時頃、一行は袋小路にある建て売りの一軒家、ラヴィーン家に到着する。すると、レシカーはホンダ・アコードのボンネットを開け、まだ熱いエンジンを分解し始めた。私設車道で取っ組み合いの喧嘩に発展し、ラヴィーンは娘たちを家の中に避難させ、レシカーを締め出した。

2人はその後の顛末を全て見た。「パパはビリーおじさんが鍵をかけたことに怒ってた」とレシカーの娘は母と祖母に伝えた。父が自分の名前を呼ぶのが聞こえると、扉を開け中に入れた。「パパがビリーおじさんの方に歩いて行ったら、ビリーおじさんはパパに向かって銃を撃ち始めたの。パパは踊ってるみたいだった。地面に倒れてもビリーおじさんはずっと撃ってた。パパの顔が見えた時にはもう死んじゃってるのがわかった」

カンバーランド郡保安官代理たちが現場に駆けつけた。日は暮れ、住宅街の袋小路は緊急車両の明かりで照らされていた。ラヴィーンは街まで連行されたが警察署に長く留まることはなかった。郡捜査官にはレシカーがドライバーを持って襲いかかって来たため、子供達を守るためにも正当防衛として発砲するしかなかったと供述し、レシカーの母、妹、妻にも同じ説明をした。

その釈明は説得力に欠けていた。レシカーの遺体の近くでドライバーは発見されなかった。検視の結果彼は背後からを含むあらゆる角度から撃たれていた。たとえレシカーがドライバーを持って襲いかかって来ても「ビリーが武器を取り上げるという選択肢を忘れるわけがありません。彼はその訓練をして来ています」とニコールさんは言う。

『Connecting Vets』のジャック・マーフィーが入手した情報によると、勤務中の出来事であったかの調査をしていた陸軍の捜査員はドライバーの件を含め、ラヴィーンの供述と実際に集められた証拠にいくつか矛盾点があると指摘している。「このことから(ラヴィーンの)供述に信頼性はないと判断した」と2019年3月11日にまとめられた報告書で結論づけられている。

にもかかわらず、地元警察はラヴィーンの釈明に満足したようで、特に記録もされなければ写真も撮られず、保釈審問も行われなかった。留置所で一晩も明かさなかった。カンバーランド郡のスポークスマン、ショーン・スウェイン氏はラヴィーンが薬物検査を受けたか「全く知らない」が、個人所有の45口径ハンドガンで優秀なグリーンベレー隊員を射殺しても逮捕されていないところを見ると、受けていない可能性が高いだろうと話している。

レシカーの殺害は「正当殺人」と判断されたが、そのような経緯でそれに至ったかスウェイン氏は説明しなかった。地方検事局もこれについての複数回の問い合わせに応じなかった。保安官事務所がレシカー家に調査報告書を見せなかったことについてスウェイン氏は所の方針だと弁明した。「捜査は打ち切られてもこの事件は一般には公開されないと伝えられました」とローラさんは言う。

陸軍の犯罪捜査司令部(CID)も事件を公表しないのと同じ理由で殺人の正当性を認めた。スポークスマンのクリス・グレイ氏はメールで事件の捜査はカンバーランド郡が「管轄」していたが、CIDも全ての証拠や証言に目を通していると答えた。「CIDは完全で公平な捜査を行い、それを否定する意見は認めません」

レシカーの母、タミー・メイビーさんは警察官として18年間勤め、通信指令室のオペレーターや看守に加え、カリフォルニア州、アイダホ州、ネバダ州で巡査として働いた。「刑事になったことはありませんが、限られた事件捜査経験からでも何もかもおかしいということはわかります。殺人犯を野放しにするとは一体どういうことですか?」と彼女は言う。

隅々まで検閲されたCIDの報告書を受け取ったニコールさんは「紙の無駄」だと表現した。「まともに捜査をしていればこの2年半の薬物事件や死亡事件は起きなかったはずです」

Translated by Mika Uchibori

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