米陸軍エリート部隊、上層部がひた隠しにするタブーの正体

グリーンベレー隊員マーク・レシカー(左と、右の写真のタトゥーのある方)はそれぞれの幼い娘が目撃する中、麻薬の効果で激化した口論の末、親友で同じく特殊部隊員のビリー・ラヴィーン(一番右)に射殺された。数年後にはラヴィーンも胸を撃たれて死亡し自分のトラックの荷台で発見された。特殊部隊内で薬物絡みの事件が連続する中、フォートブラッグで麻薬を密売していたとして当時取り調べが行われていた。(Courtesy of Laura Leshikar, 2)



軍の任務に伴う代償

レシカーの母、タミー・メイビーさんは息子の薬物乱用問題を知っていた。2017年にタジキスタンで路上爆弾により外傷性脳損傷を受けてしまった息子に、依存性の高い鎮痛剤であるトラマドールを処方した陸軍に原因があると主張している。「家に帰って来ると明らかに目に生気がないんです」

その後1年間でレシカーはベンゾジアゼピンに移り、MDMA、コカインへとエスカレートして行った。母にはグリーンベレーでは不眠で作戦に参加しなければならない時はコカインを吸うのだと説明し正当化しようとしていた。「抗うつ剤みたいなものだよ」と彼が言うとメイビーさんは「『いいえ違うわ、だって違法だもの』返しました」。

アルコールはさらに深刻な問題だった。「コカインを使っている時はごく普通に振る舞っていました。マーキーがひどく落ち込むのはお酒を飲み過ぎた時です」とメイビーさんは言う。「俺が悪い人間だって知ってるだろう?俺は人を殺して生きてるんだ」などと妻に言っていたそうだ。

十数回目の派遣を終える頃にはラヴィーンも同じくらい精神的ダメージを受けていた。ニコールさんによると、酒を飲むと「見透かされているような」「魂が抜けた」表情をしていた。過去に一度少年兵を殺したことがあると告白したことがあった。「まだ幼い男の子だった」「だが銃を持っていたんだ」と彼の言葉をニコールさんは繰り返す。特に頭から離れない記憶がもう一つあった。瓦礫の山と化した町の中を連れ歩いていた軍用犬のベルジアンマリノアに、「ご褒美」と称して死体を食べさせていた。

『Eagle Down: The Last Special Forces Fighting the Forever War』の著者ジェシカ・ドナーティ氏によると、2014年以降アメリカのアフガニスタンとの終わりの見えない戦争の重荷はほぼ完全にグリーンベレーが背負い込むようになってしまった。その理由として、歴代の政権が「政策の穴を埋めるための政治的道具」として使い、アメリカが戦闘活動から足を洗ったという幻想を維持しようとして来たことを挙げている。家から遠く離れた場所で長い間暴力に晒され、また暴力を振るう側にも立ち、自分の任務に幻滅した特殊部隊員は離婚やアルコール依存、薬物依存、アンガーマネージメントの問題に陥るリスクが激増するとドナーティ氏は言う。

「戦闘による心的傷痍や精神的損傷だけが問題ではありません。外傷性脳損傷も大きな問題です」とネイラー氏。「100日間で40回襲撃を行ったとすると、そのうち15回では10ヤード以内で扉爆破の衝撃を受けています。その時に加え、空爆の指示を出す際や装甲車がIEDで大きく揺れる時に脳が頭蓋骨の中で十数回跳ね返り、このダメージが毎回蓄積されていくのです」

ニコールさんはラヴィーンを、他のデルタフォース隊員と比べて「内向的」で思いやり深く、「精神的に苦痛」に侵され傷つけられた人だと形容した。「私は彼の言動を見て来ました」仲間たちと違い、ラヴィーンは殺した人数を自慢することはなかった。アメリカは中東に核爆弾を落として早々に決着をつけるべきだと言うレシカーに対して反対の意思を示した。「向こうには違う社会があるんだ。同意は出来ないけど、我々が向こうでしていることは間違っている」というラヴィーンの発言をニコールは回顧する。


(写真)ラヴィーンと共に射殺された遺体が発見された陸軍獣医のティモシー・デュマス(44)。捜査当局は未だ容疑者の特定に至っていない。「常に敵意を剥き出しにしていた人物でした」とデュマスから家を借りていた刑事は言う。「あまり人に威圧されることないのですが、彼は恐ろしかったです」(Photo by FBI)

2018年3月、マークと妻のローラ・レシカーさんは娘の5歳の誕生日にディズニー・ワールドへ連れて行った。1週間の休暇には「ビリーおじさん」と呼んでいた名付け親のラヴィーンも、彼女と従姉妹のように親しくしていた自分の娘を連れて同行していた。

娘たちの視界に入らないところで、レシカーとラヴィーンは酒と薬を続けた。死後薬物検査でレシカーはジアゼパム、トラマドール、MDMA、コカインを使用していたことが確認されている。「最後の1回にするつもりだったんです」とセント・パトリックス・デーに兄と最後の会話を交わしたニコールさんは言う。「今回で足を洗うつもりでした」

ノースカロライナに戻る8時間の道中で、ローラさんは姉をローリーの空港まで送るために別れた。夫とラヴィーンは後部座席に娘たちを乗せたファイエットビル行きの車に残った。

Translated by Mika Uchibori

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