米陸軍エリート部隊、上層部がひた隠しにするタブーの正体

グリーンベレー隊員マーク・レシカー(左と、右の写真のタトゥーのある方)はそれぞれの幼い娘が目撃する中、麻薬の効果で激化した口論の末、親友で同じく特殊部隊員のビリー・ラヴィーン(一番右)に射殺された。数年後にはラヴィーンも胸を撃たれて死亡し自分のトラックの荷台で発見された。特殊部隊内で薬物絡みの事件が連続する中、フォートブラッグで麻薬を密売していたとして当時取り調べが行われていた。(Courtesy of Laura Leshikar, 2)



特殊部隊内で流行するハードドラッグ

近年、特殊部隊内でハードドラッグの使用が常態化していると内部告発者は言う。薬物乱用問題が「深刻化」している中、複数の同僚からコカイン、メタンフェタミン、MDMA、ヘロインの陽性反応が出たと2017年に匿名のネイビーシールズ隊員3人がCBSに伝えた。2014年にはアンヘル・マルティネス=ラモスというシールズ隊員がマイアミの空港に手荷物として10キロのコカインを持ち込み逮捕され、その後罪を認めた。2015年には元シールズ隊員ジェイムズ・マシューズがニュージャージー州で140万ドル分のマリファナを積んだトレーラーを牽引しているところを警察に止められた。2018年には元特殊部隊曹長のダニエル・グールドとヘンリー・ロイヤーがサンドバッグに詰められたコカインをコロンビアから輸入しようとして逮捕された。これらは氷山のほんの一角である。

全ての特殊作戦部隊の指揮を執るリチャード・クラーク大将は2019年8月、「包括的な倫理調査」を命じた。2020年初めに公表された報告書はほとんどが指導や説明責任を徹底するという旨の曖昧な言葉で濁されていたが、隊員たちの「自覚の欠如」は確認されたと記されている。

国防総省の複雑で多岐にわたる行政活動のうち最も重要なものを担う2つの機関がフォートブラッグに拠点を置いている。第75レンジャー連隊やグリーンベレーなどを統轄しているアメリカ陸軍特殊作戦コマンド(USASOC)と、軍の「秘密作戦」を取り仕切るJSOCだ。謎に包まれ、潤沢な資金を持つJSOCは2019年に行われたイスラム国指導者アブー・バクル・アル=バグダーディーの暗殺など、最も政治的リスクが高く、失敗が許されない作戦を遂行する海軍のシールズ・チーム6や、陸軍のデルタフォースを含む各軍一のエリート特殊部隊の作戦統制権を持っている。ヒンドゥークシュ山脈の雪道からソマリアの荒野まで、過去20年間戦闘を続けて来たJSOCの予算と権力が増し続けると共に、作戦の幅も広がっていった。フォートブラッグ内に厳重に警備された拠点を置く、軍の中の極秘の軍だ。


(写真)グリーンベレー隊員マーク・レシカー(左と、右の写真のタトゥーのある方)はそれぞれの幼い娘が目撃する中、麻薬の効果で激化した口論の末、親友で同じく特殊部隊員のビリー・ラヴィーン(一番右)に射殺された。数年後にはラヴィーンも胸を撃たれて死亡し自分のトラックの荷台で発見された。特殊部隊内で薬物絡みの事件が連続する中、フォートブラッグで麻薬を密売していたとして当時取り調べが行われていた。(Courtesy of Laura Leshikar, 2)

「この組織に関することは実質全てが国家機密です」とJSOCの歴史を記す『Relentless Strike』の著者ショーン・ネイラー氏は言う。「ほとんど活動していなかったのが9.11以降、毎晩全世界で10以上の作戦を同時に遂行するようになりました」

これらの作戦はアメリカの存在感が薄い国で行われ、兵士たちは「目標が達成され、戦術が公や権力者に知られない限りモラルや倫理が見る者に委ねられるような”グレーゾーン”で動いている」と、フロリダに軍用機で50キロのコカインを密輸しようとした罪で連邦刑務所に収容されている元グリーンベレー隊員が著者宛の手紙に書いた。「エリート兵士なら娼婦、銃、薬、欲しい物なら何でも手に入る。司令部から遠く離れた場所で清廉潔白でいられると思われているんだ」

ラヴィーンとデュマスの遺体の発見は地元警察にも大きな衝撃を与えた。国内最大の陸軍基地であるフォートブラッグが所在しているとはいえ、ファイエットビルは白い時計台を中心に赤いレンガ造りの古い建物が立ち並び、そのすぐ外をディスカウントストア、ドライブスルーのハンバーガー屋、銃販売店、バプテスト教会が囲む比較的小さい南部の町だ。デュマスはノースカロライナ州で脅迫や官名詐称で何度も逮捕されているが、起訴されたことはない。ラヴィーンも複数回起訴を逃れて来たが、彼が疑いをかけられたのは脱獄犯の蔵匿、薬物の製造を行う場所及び道具の所持、そして殺人まで含む重罪だ。

ラヴィーンは2018年に親友のグリーンベレー隊員マーク・レシカーを麻薬の効果で激化した口論の末、射殺した。目撃者は幼い女の子2人だけ。保安官代理が署まで同行したが逮捕や起訴されることはなく、その夜デルタフォースの同僚に家まで送られた。「彼らの行動は極秘にされています」と多数の現役及び退役したデルタフォース隊員が家を持つヴァスという小さな町のダイアン・バラード刑事は言う。「やりたい放題です」

しかし、ラヴィーンの死体発見で一番困ったのはフォートブラッグの上層部だ。陸軍は2020年に基地内で亡くなった兵士の合計人数を発表していないが、ラヴィーンの死で他殺と自殺を含む死者の数が最低でも44人に達し、フォートブラッグは大差をつけて不名誉な1位を獲得した。2020年の死者が28人で2位だったフォートフッドには議会の調査が入り、”悪習”が一掃され、指揮官のほとんどが解雇された。国家軍事委員会は未だフォートブラッグの類似性に気がついていないようだ。

Translated by Mika Uchibori

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