米陸軍エリート部隊、上層部がひた隠しにするタブーの正体

グリーンベレー隊員マーク・レシカー(左と、右の写真のタトゥーのある方)はそれぞれの幼い娘が目撃する中、麻薬の効果で激化した口論の末、親友で同じく特殊部隊員のビリー・ラヴィーン(一番右)に射殺された。数年後にはラヴィーンも胸を撃たれて死亡し自分のトラックの荷台で発見された。特殊部隊内で薬物絡みの事件が連続する中、フォートブラッグで麻薬を密売していたとして当時取り調べが行われていた。(Courtesy of Laura Leshikar, 2)

2020年に最低でも44人の米フォートブラッグ所属軍人が国内で死んでいる――そのうち複数が他殺だ。遺族が真実を求める一方、軍は口を閉ざしたままでいる。長文ルポでその内幕に迫る。

【写真を見る】遺体は頭部のみ 旅行中に斬首された特殊部隊員

クリスマスの3週間前、鹿猟師がノースカロライナ州のフォートブラッグ基地周辺の松林で発見したのは謎の銃撃戦の跡だった。マットブラックのホイールにレーシングタイヤを履いた改造シボレー・コロラドがマッカーサー湖付近の土の道に出来た轍にはまっていた。トラックの荷台と横の地面には2人の男の死体。どちらも射殺されており、地面には薬莢が散らばっていた。しかし現場に銃はなく、2人を撃った人物の手がかりもなかった。

右のこめかみを撃たれ地面に横たわっていたのは44歳のティモシー・デュマス。典型的なアメリカ人だったと生前の彼を知る人たちは語る。特殊部隊気取りの、周りを威圧するためだけに元奇襲隊員だと言いふらすような男だった。彼は19年間陸軍に所属し、フォートブラッグの第7特殊部隊に一時いたこともあったが、保有物品簿記、補給係下士官としてだった。

一方、トラックの荷台に乗っていた男は別だ。14回にわたる戦地への派遣から多数の記章やワッペン、勲章を授与している特殊部隊員で、合衆国一のエリート部隊デルタフォースに所属していたビリー・ラヴィーン二世は37歳にして真のTier 1所属軍人、陸軍の謎多き最精鋭部隊の曹長だった。レンジャー、グリーンベレー、ネイビーシールズ隊員の基本的な訓練に加え、破壊活動、爆破、人質救出、戦術的運転、ピッキング、さらには尾行、デッド・ドロップ、潜伏などのスパイ活動に必要な技術も叩き込まれている。

そんな彼がまるで寝ている間に殺されたかのように死んでいた。陸軍で通称「レンジャー・パンティー」と呼ばれる短いランニングパンツのみを身につけた彼の胸には複数の弾痕があり、「ウービー」と呼ばれるナイロン製の布に包まれた状態で彼が所有する灰色のシボレーの荷台に乗せられていた。

現場から麻薬は発見されなかったが、フォートブラッグに拠点を置く統合特殊作戦コマンド(JSOC)は最近特殊部隊内で頻発している薬物関連事件と同様のものに至る要素は十分あると見ている。常習的にコカインやMDMAの使用、睡眠薬の過剰摂取、深酒をしていたとラヴィーンを知る複数の人が語り、彼の親友の妻ローラ・レシカーさんは「どうにもならない状態でした。ビリーに会う時はほぼ毎回何かで酩酊していました」と言う。

遺体が発見された翌日、ラヴィーンとデュマスは死亡当時フォートブラッグに薬物を持ち込んだ疑いで調査されており、「取引で問題が発生したため殺された」と見て調べが進められていると、ある陸軍当局者がCBSにリークした。

Translated by Mika Uchibori

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