セックス・ピストルズ『勝手にしやがれ!!』 メンバーによる40年後の全曲解説

セックス・ピストルズのジョニー・ロットンとグレン・マトロック(Photo by Ray Stevenson/REX/Shutterstock)


11. 「ニューヨーク」



ロットン:あれはニューヨーク・ドールズのことを指してた。悪意があるとは俺は思わないね、バビロンからの強烈な一発さ。“キスのチャンスをうかがってる”ってね。やつらとは友達だし、誰からも因縁をつけられたことはないよ。特定の個人を攻撃したわけじゃないんだから当然さ。あの頃イングランドじゃ、グラムロックはもう時代遅れだとみなされてた。デヴィッド・ボウイはうまく方向転換してたけど、スウィートやT・レックスみたいな口紅を引いてタイトなパンツを履いてるようなバンドが掃いて捨てるほどいて、みんなうんざりしてたんだ。

ニューヨークのバンドの大半は年齢的に少し上だったし、通りを逃げ回ってるネズミのような輩どもとは無縁の坊ちゃんたちに見えた。甘やかされて育ち、似た者同士で群れてたボンボンたちに、俺は少し嫉妬してたのかもしれない。詩人のランボーを引き合いに出してるあたりも気に食わなかったし、フェイクだと感じてた。

俺は初めてニューヨークに行った時に(ランボーの詩を)読んだけど、そんなに優れているとは思わなかった。人生の本当にタフな面を感じさせるエッジがないんだ、過大評価もいいとこさ。俺が思うに、イングランドとアメリカのパンクシーンの違いはそこだったんだよ。アメリカのシーンは気取ってて、アート志向の坊ちゃんたちの集まりだった。それに対して、「アートなんかクソ食らえ、踊ろうぜ」っていうのが俺のアティテュードだった。

マトロック:作曲の面では、あの曲の元のアイデアを出したのは俺だ。アメリカでは当時『Secret Agent』ってドラマ(オープニング曲は「Secret Agent Man」)が放送されてたはずだけど、イングランドでは(『Danger Man』という別タイトルで放送されており)テーマングが違ってたんだ。俺はあれをロックっぽくしたような曲を書こうとしてて、ベースでコード進行を考えた。そこにジョンが、あのニューヨーク・ドールズをコケにした歌詞を乗っけたんだ。正直にいうと、この曲はあんまり気に入ってないな。

ロットン:「ファゴット(ホモの意)」って言葉はニューヨーク・ドールズのやつらのことを指してたわけじゃない。彼らはそうじゃないからね。あれは歌詞の意味をねじ曲げようとするような聴衆に向けた言葉さ。みんな知らないけど、イングランドにはファゴットって料理があるんだ。当時ロンドンの街中で「北イングランドの名物料理:ファゴットとグレイビーソース」っていう広告を見かけたんだよ。醜いこと極まりない広告をあちこちに出してて、それを南部に普及させようとしてたんだ。どこの会社の商品だったかは覚えてないけど、ロンドンっ子たちの間ではとにかく不評だった。あれがその料理についての曲だとは言わないけど、あの言葉をその広告から拝借したのは事実だよ。身の回りにあるものを借用するっていうのは、俺がよく使う手なんだ。環境に適応しようとするんだよ。郷に入っては郷に従えさ。


12. 「拝啓EMI殿(アンリミテッド・エディション)」(原題:EMI)



ロットン:俺たちと契約しようとしたEMIは、自分たちがいかに立派で多様性を重んじるレーベルかってことをアピールしてたけど、もちろん嘘っぱちだった。この曲を書くのは楽しかったよ。スタジオに入ってから作り始めたんだけど、まるで何かに取り憑かれたように没頭して、あっという間に書き上げた。やつらの頭にあったのは、レーベルの名前を売ることと巨額の金を稼ぐことだけだった。その指揮をとってたのがヒッピー世代のやつらなんだから、興ざめもいいとこさ。レーベルが倒産したのは、あいつらが金を自分の懐に入れてたからだ。俺たちのTシャツの「ヒッピーを信じるな」っていうプリントはそういう意味なんだよ。ドンピシャだったな(笑)。

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From Rolling Stone US.

Translated by Masaaki Yoshida

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