セックス・ピストルズ『勝手にしやがれ!!』 メンバーによる40年後の全曲解説

セックス・ピストルズのジョニー・ロットンとグレン・マトロック(Photo by Ray Stevenson/REX/Shutterstock)


1. 「さらばベルリンの陽」(原題:Holidays in the Sun)



ジョニー・ロットン:休暇を取ろうってことになって、メンバー全員でチャンネル諸島に行ったんだけど、どの店からも入店を拒否された。当時セックス・ピストルズはありとあらゆるところで出禁になってて、俺たちを受け入れてくれるホテルも皆無だった。泊まれそうなところを探してビーチを行ったり来たりしてたら、何もかも虚しくなったよ。結局地元のギャングのトップのやつが俺たち全員を一晩だけ自宅に泊めてくれて、その翌日には全員で島を離れた。

スティーヴとポールは自宅に帰ったけど、俺とシドはベルリンに行くことにした。あり得ない選択肢だったけど、チャンネル諸島みたいな平和な場所にさえ拒否されちまうんなら、この際ベルリンの壁を見に行こうと思ったんだ。すごくスリリングだったし、楽しかったよ。「さらばベルリンの陽」は、その時の経験にインスパイアされた曲なんだ。壁の西側に立った俺たちに、(ドイツ軍の)兵隊は銃を向けてた。東側を見たかったんだけど、ギロリと睨まれて「ノー」とだけ言われたよ。

マトロック:「さらばベルリンの陽」は俺が抜けた後の曲なんだけど、いい出来だと思う。ザ・ジャムの「イン・ザ・シティ」に似てるね。ポール・ウェラーは俺のダチなんだけど、彼はある日ロックスターたちの夜遊びの場だったSpeakeasy Clubっていう酒場でシドと鉢合わせた。ジャムの曲をパクってやったって堂々と口にしたシドを、ポールはビール瓶でぶん殴ったんだ。俺はポールの味方さ。



2. 「ボディーズ」



ロットン:曲に出てくるPaulineって女性はとにかく狂ってて、精神不安定だった。最近じゃストーカーっていうんだろうけど、当時はそんな言葉はなかった。こっちがどんなに拒否しても一向に気に留めない図々しいファンは多かったけど、彼女はその1人だった。俺たちが行く先々に現れては、しつこく付きまとうんだ。マジでウザかった。

「ボディーズ」は中絶についての曲だ。実際に出産を経験し、その後も苦労を背負うのが女性である以上、産む産まないを決める権利は当然彼女たちにある。誰も望んでない子供を産むべきか? 俺はそうは思わないけど、それはあくまで個人的な意見に過ぎないし、俺は常に女性の意見を尊重するようにしてる。いつもね。あの曲は双方の見方を描いていて、俺自身の姿も投影されてる。神の意思っていう考え方がなかったら、俺の母親は中絶を選び、俺はこの世に存在しなかったかもしれないんだ。

“あれもこれもクソくらえ”(fuck this and fuck that)っていうラインは即興じゃなく、歌詞としてちゃんと書き留めておいたんだ。それが俺の正直な気持ちだったからね。何が正しいのかまったくわからないっていうフラストレーション、俺が感じていたのはそれだった。“あれもこれもクソくらえ / 何もかもくたばっちまえ そのクソガキも / あんなのにそっくりな子供なんていらない / あんな醜い子供なんて欲しくない”涙ながらに訴えてる赤ちゃん、あれは俺さ。“ママ、僕は動物なんかじゃない / パパ、僕は未熟児なんかじゃない”ってね。人生ってのは二元的で、正しい選択なんてものはないんだ。中絶っていうのは俺たちと同じ人間の命を絶つ行為であり、決して軽んじられるべきじゃない。

Translated by Masaaki Yoshida

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE