セックス・ピストルズ『勝手にしやがれ!!』 メンバーによる40年後の全曲解説

セックス・ピストルズのジョニー・ロットンとグレン・マトロック(Photo by Ray Stevenson/REX/Shutterstock)


6. 「怒りの日」(原題:Problems)



ロットン:「問題なのはお前だ」(The problem is you)っていうライン、あれは不特定多数のことを指してる。そこには俺自身も含まれてる。10代の頃は誰もが自分に不満を覚えてると思うんだよ。それが普通だし、みんな「俺がナンバーワンだ」っていう思いは多かれ少なかれ持ってるはずだけど、実際にはそんな存在はいない。ティーンエイジャーってそんなもんだろ? 嫌でも意思決定を迫られる大人の世界に向かって、皆が足並み揃えて行進してるんだってことを自覚し、覚悟を決めておいたほうがいい。それに抗うことがカオスそのものだってこともね。

バンドとしての俺たちの道程は問題づくめだった。何で一緒にやってんのかってことについて、膝を交えて話し合ったことなんて1度もなかった。俺たちは仲が悪そうに見えてただろうけど、実際そうだったと思う。1年半っていう期間をあんなにも長く感じたことはないし、メンバー全員がそう思ってるだろう。当時のことを振り返ると、10年分の経験をごくわずかなスペースに無理やり詰め込んだように思えてくるんだ。精神的にも肉体的にも、ものすごく消耗したよ。

それでもバンドを続けた理由はひとつ。プレイヤーとしてのメンバーたちを、俺は心底リスペクトしてたからだ。みんな未熟だったけど、俺は学ぶってことをすごく楽しんでた。ミスター・ジョーンズのギターには痺れたし、ポールのドラミングの安定ぶりにはいつも驚かされてた。シドはマジで下手だったけどね。レミーがズバリとこう言ってたよ。「シド、お前は音痴だ」ってさ。シドはハッタリをかますだけの存在だったけど、それでいいんだよ。それは俺たちの武器だったし、それが必要になることもあった。やつをバンドに引き入れたのは俺だから、それに伴った数々のトラブルの責任は俺にある。でもその経験から曲ができたんだから、無意味だったわけじゃないんだ」


7. 「セブンティーン」



マトロック:この曲のアイデアはジョンが加入する前からあった。元の歌詞はスティーヴが書いたんだけど、それをジョンがアレンジしたんだ。

ロットン:スティーヴが書いた原曲は「Lonely Boy」ってタイトルだった。すごくシンプルだったアイデアを俺がアレンジして、10代の葛藤を描いた曲に変えた。「セブンティーン」っていうタイトルをつけたのは、それが何もかもに一番傷つきやすい年齢だからだ。まだ成人ではないけど、分別のない子供だとはみなされたくない。そのくせ、大人の世界に入っていくための心の準備はできてないんだ。(「セブンティーン」っていうタイトルは)アリス・クーパーの「エイティーン」からきてるんだけど、アメリカ人はのんびりしてるんだなって思ったよ。「お前はまだ29だ」っていうライン、あれは俺自身に言い聞かせようとしてたんだと思う。親父とおふくろにはいつもこう言われてたんだ。「お前は赤ちゃんの頃からおっさんみたいだったけど、あのバンドに入って以来退行してる」ってさ。生まれた時の俺はいくつぐらいだったんだって親父に訊いたら、「45歳」って言ってた。17〜18歳と45歳のギャップは29歳ってことになるから、あながち的外れじゃないんだよ。

歌詞の他の部分は、俺の周りにいた人間のことを指してる。だから孤独な少年の抱える問題についての曲とは言えないな。それは誰もが経験しながら、誰も向き合おうとしない問題なんだ。優れた本って、内容が恥ずかしすぎるがゆえにそれが真実だってことが伝わってくるんだよ。でも著者がその真実に向き合うことは、読者にとってすごく重要なんだ。そうすることで、両者の間に存在する壁が崩れるからね。“俺は働かない ドラッグをやるだけ”っていうのは、悲しくも愛おしい、無垢な俺の人生の一部のことを歌ってるんだよ。悲しいのは、俺には酒もドラッグもまるで足りてなかったってところさ(笑)。バンドに入った時点で、そういうのを全部を断念しないとけなかったからな。何かひとつのことに集中しなくちゃいけなくなったことは、俺にとって大問題だったんだ。

“怠惰なガキ”(lazy sod)なんていうラインもあるけど、当時の俺たちは文字通り四六時中働いてた。そんな頃に、ツアーに出たくても出れないっていう事態に見舞われたんだ。ギグが中止になるたびに、ファンを失望させまいっていう思いひとつで積み重ねてきたものを全否定されるように感じた。でもってショーがキャンセルになることで、結局ファンを失望させてしまう。ストレス以外の何物でもなかったよ。

Translated by Masaaki Yoshida

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