セックス・ピストルズ『勝手にしやがれ!!』 メンバーによる40年後の全曲解説

セックス・ピストルズのジョニー・ロットンとグレン・マトロック(Photo by Ray Stevenson/REX/Shutterstock)


10. 「プリティ・ヴェイカント」



ロットン:これもグレンがいた頃に書いた曲だ。グレンはバンドのイメージについて、よく「ソーホーのおかまたち」“Soho poofs”っていうフレーズを口にしてた。オスカー・ワイルドの影響だったんだろうね。この曲に限ったことじゃないけど、俺たちは別にゲイのことを標的にしてたわけじゃなくて、単にそういうファッションに興味があったんだよ。フリルやレースのついた服を着た自分の姿なんて、俺自身は想像もできなかったがね。結局「プリティ・ヴェイカント」のコンセプトは、サッカーのチャントにぴったりだと解釈された。フーリガンどもが集まる立ち見席に看板を出したスポンサーの大企業どもが、やつらのテーマソングとして定着させたんだよ。

マトロック:当時マルコムはイギリスとアメリカを頻繁に行き来してた。やつはテディボーイのショップを持ってたから、絨毯を売りさばいて50年代の服を仕入れたりしてたんだ。その頃にやつはどっかのバックステージで、ニューヨーク・ドールズのシルヴェイン・シルヴェインと会ったらしかった。やつはショーのフライヤーやセットリストを持ち帰ってきたけど、当時はどのバンドもまだ1枚もレコードを出してなかった。セットリストのひとつに「ブランク・ジェネレーション」って書いてあるのを見て、俺はどうしてロンドンにそういうムーヴメントがないんだろうって思った。誰もが失望していて、何かを切実に求めていただけにね。それで「プリティ・ヴェイカント」のアイデアを思いついたんだ。

コード進行と歌詞についてはある程度決まってたけど、リフを考えなくちゃいけなかった。メロディックなやつをね。そんな時にふと耳にしたアバの曲がヒントになって、俺はあのリフを思いついたんだ。アバのベーシストは俺が彼らにインスパイアされたって話してるのを知って、どういう方法でか知らないけど俺の住所を突き止め、向こう10年くらい毎年クリスマスカードを送ってきてたよ。

ジョンは俺が書いた歌詞をなぞってたけど、リハーサルはとにかく爆音だったから、やつが2番目のヴァースの歌詞を書き換えたことに気づいたのは何カ月も経ってからだった。「安っぽいコメントは無用 どう感じてるかは俺たちが一番よく知ってる」(No cheap comments, because we know what we feel)っていう部分にね。あの曲は俺たちのステートメントと言ってよかった。

ロットン:あの曲には皮肉が込められてる。俺たちはプリティでもなければ、空っぽでもなかったからね。俺が何度も同じことを言うのは、曲について誤解してほしくないからだ。俺は自分のことを素敵だとも空っぽだとも思っていない。俺はもっと気楽な人生を歩むべきだったのかもしれないな。とんでもない間違いかもしれないけど、そしたら苦労せずに済んだのかもって思うんだよ。でも俺は、社会のシステムに飲み込まれてしまうのは絶対にご免だったし、そんなことを是認する気はなかった。俺はバレないように、「Pretty Va-cunt(頭すっからかんのおまんこ野郎)」って歌ってたんだよ。

Translated by Masaaki Yoshida

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