米国史上唯一の未解決ハイジャック事件、運命を狂わされた客室乗務員の半生【長文ルポ】

ハイジャック事件に遭遇した客室乗務員、ティム・マックロー(Courtesy of Tina Mucklow)



無礼な自称ジャーナリストたち

マックローによると、取材を申し込んでくる人々の90〜95パーセントが男性だという。中には、過剰なハラスメント行為に及ぶ者もいる。長年彼女との接触を試みてきた人々の中には、礼儀をわきまえたプロのジャーナリストもいたが、ノーという回答を受け付けないアグレッシブなクーパー信者も少なくなかった。「『ノー』『興味ありません』といった返事、あるいは返答しないというこちらの対応を尊重してもらえないことが多くありました」彼女はそう話す。「返事がないというのは、『ノー』か『興味ありません』と同意義のはずです」。中には彼女の自宅に押しかけ、取材を断られてからも家の前に停めた車の中で粘り続ける人物もいたという。ある時には、彼女が職場の駐車場にいるところを盗撮されたこともあった。別の人物は、「クリスチャンの女性は電話を無視したりしない」といって彼女を非難した。また彼女を延々と追い回しているある人物は、取材申し込みを何度か拒否された後、ブログのある投稿で彼女について「社会的孤立者」「短気」「性悪」「世捨て人」「脆く傷ついた女性」「トラウマを抱えている」などと表現していた。


ネバダ州リノに着陸後、FBIにエスコートされて記者会見会場に向かう副操縦士のBill Rataczakとティナ・マックロー(Photo by AP)

ごく稀に取材に応じた時でも、彼女から期待した返答が得られなかった場合、相手は失望や不満を露わにした。「『それはクーパーかもしれません』と私が言わなかった時は、『かわいそうに、年老いて記憶がぼやけてしまってる』『眼鏡を必要とするくらい目が悪いから、判別できないらしい』などと言われました」

謎に思い悩まされる人の気持ちも、マックローは理解できるという。「気になっていることをはっきりさせたいというのは、ごく自然なことだと思います」。彼女はそう話す。「それは分かります。それぞれに言い分はあるでしょう。しかしだからと言って、それを他人に押し付けていいことにはならないはずです」

2016年にFBIがD.B.クーパー事件の捜査を打ち切った時、マックローは悲しみを覚えたという。彼女は彼らが犯人を突き止め、逮捕することを期待していた。「彼は犯罪者です」。彼女はそう話す。「彼は私の人生を脅かしただけでなく、何の罪もない大勢の乗客の命を危険に晒しました」。同時に、彼女は彼らの決断を尊重してもいる。「事件から経過した年月と、現在の世界における様々なニーズを考えれば、見切りをつけるべき時だったのでしょう」

Translated by Masaaki Yoshida

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