米国史上唯一の未解決ハイジャック事件、運命を狂わされた客室乗務員の半生【長文ルポ】

ハイジャック事件に遭遇した客室乗務員、ティム・マックロー(Courtesy of Tina Mucklow)



マックローこそがクーパー事件の鍵を握る存在?

犯人が捕まらないまま時が過ぎても、D.B.クーパー事件への世間の関心は絶えなかった。事件からわずか5年後の時点で、FBIは既に800人以上の容疑者をリストアップしていた。次から次へと出てくる、犯人かもしれないとされる人物たち(残念なことにその大半は既に死亡していたが)についての本やTVの特番も数多く見られた。FBIが本命と考えていたリチャード・マッコイは、クーパー事件のわずか5カ月後に全く同じ手口のハイジャック事件を起こし、現金50万ドルを手に別の727機のエアステアから飛び降りた。結局マッコイはクーパー事件との関連について自白せず、刑務所から脱獄を図った際に射殺された。1995年には、死の淵にあった退役軍人のDuane Weberがベッドに横たわったまま「私はダン・クーパーだ」と妻に告白し、彼女は彼に犯罪歴があることをその後知った。また70年代後半にプライベート機のアマチュアパイロットだったBarbara Daytonと知り合ったというあるカップル曰く、彼女はある晩のディナーの最中に自分が犯人だと告白したという。さらにMarla Cooperという女性は、自分の叔父がハイジャック犯かもしれないと語った。その男性L.D. Cooperは事件があった日に血まみれで帰宅し、その理由について「七面鳥の狩りに行っていた」と話していたという。各容疑者に関する状況証拠はどれも興味深かったが、FBIが求めていた確固たる証拠を提示できる者はいなかった。

素人探偵の多くは、マックローこそがクーパー事件の鍵を握る存在だとみなすようになった。2011年、ジャーナリストのジェフリー・グレーが発表した著書『Skyjack: The Hunt for D.B. Cooper』では、元ノースウエスト航空の従業員で落下傘兵の人物を犯人とする説が展開されている。マックローに話を聞こうとしていた彼は、彼女に再三接触を試みたことを同書に記している。「年老いた元スチュワーデスがリビングのソファに腰掛け、留守電の自動音声が再生されるのをただ見ている姿を想像しながら、私は彼女が受話器を上げ、長年その胸にしまい続けている秘密を明かしてくれることを夢見ている。ティナ、どうか電話に出て欲しい。彼女が受話器に向けて手を伸ばすよう、私は祈るような思いと共に念力を送り続けた」。しかし、彼女は取材に応じなかった。

Translated by Masaaki Yoshida

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