人間・氷室京介、プロデューサーが語るロックスターの素顔

山崎:お願いしていたのが年末からで、ツアー後半から何度かインタビューさせてもらってるうちに、この人の言葉だけじゃなく紡ぎ出す音楽が、番組のためだけじゃなくて、日本のエンタメ業界に必要かもしれないなって思って。最初のオファーもダメ元でやってできたから、今回も無理難題言ってみようかな、歌詞も書いていただけるんだったらお願いしたいという条件でした。今思うと本当に生意気なんですけど、それでも快く引き受けてくださったという感じですね。

田家:そこから始まって、2016年の「LAST GIGS」までが映像に収められた。その中には2014年の横浜スタジアムのあの映像というのも劇的に収められています。その時の音をお聴きいただこうと思います。事務所から音源をご提供いただきました。骨折と雷雨の中断の中で歌われた曲です。

The Sun Also Rises (2014.07.20 YOKOHAMA STADIUM) / 氷室京介

田家:これは雷の音です。2014年7月20日、横浜スタジアムでのアンコールでした。あの日の映像の一部始終が頭に入っている方もおいででしょうが、何があったの? という方もいらっしゃると思うんですね。7月19日、20日と行われる1日目のリハーサルで、氷室さんがモニターに足をかけて滑って骨折したんです。それを誰にも言わずに、次の日もライブが行われました。骨折しているライブの途中から雷雨が襲ってきた中で「The Sun Also Rises」を披露して、ライブはその後1時間中断。その模様は『DOCUMENT OF KYOSUKE HIMURO "POSTSCRIPT"』の中に克明に収められておいます。

山崎:今聴いてもらったと思うんですが、骨折してるんですよあれ。でも歌は全く揺るぎない。僕はもちろん二日間とも見ていたんですが、楽屋では鬼の形相で痛みを堪えている様子を見ていたんです。信じられないです。具体的に言うと、山口の周南でライブを卒業するということを突然言って。本当はここが最後のステージになる予定だったんですよね。でも骨折と雷雨ということで、全然100点の出来じゃなかった。僕の映画の中でも一番象徴的なカットだなと思っていたんですが、このシーンを撮るために6年間追ってきたんじゃないかって思いました。1時間待っている間、氷室さんがポツンとずっと1人でいたんです。このシーンは僕の中で"あしたのジョーカット"って呼んでいるんですけど、氷室さんが楽屋で一人でうなだれてずっと待っている。10分から15分くらい僕と氷室さんの2人きりだったんです。皆が忙しくしている中、僕は遠目から氷室さんを撮っていたんですね。その時にきっと氷室さんも考えられていたんだと思います。最後、「ANGEL」1曲だけにして今日はもう終わりにしてほしいってスタッフに伝えて。最後のMCで、もう一回リベンジするって話したことは皆も聴いていなくて。それがなかったら、「LAST GIGS」も無かったと思うんです。もしかしたら、60歳やそれ以降の氷室京介の歴史の中で大きな転換点になっていた日じゃないかな。やっぱり氷室京介は伝説なんだと思わせる、端的なライブだったんじゃないかなと思いますね、

田家:伝説とはこういうものなんだという横浜スタジアム公演であり、「LAST GIGS」でした。続いての曲は「LAST GIGS」最終日5月23日東京ドームから、「PARACHUTE」。

Rolling Stone Japan 編集部

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