キング・クリムゾン「21世紀のスキッツォイド・マン」当事者たちが明かす50年目の真実

キング・クリムゾン(Photo by DGM Archives)


精密かつ破壊的な「プログレ最初の叫び」

音楽のムーブメントは突然には始まらない。ムーブメントというのはじょじょに形になっていくもので、その起源は遡及的に見いだされる。それでも、「スキツォイド・マン」はさまざまな意味でプログレッシヴ・ロックのビッグバンのように思える。ビートルズの『サージェント・ペパーズ』、ピンク・フロイドの『夜明けの口笛吹き』、ムーディ・ブルースの『デイズ・オヴ・フューチャー・パスト』ほか、60年代の半ばから末頃にかけての冒険心あふれるクラシックはいずれも、このざっくりとだけ定義されたサブジャンルの重要な先駆だ。しかし、重要なのは「スキツォイド・マン」なのだ。1969年の10月10日、キング・クリムゾンのデビューアルバム『クリムゾン・キングの宮殿』の1曲目としてリリースされたこの曲こそ、つづく50年に花開く、技術的要求の高い、形式を革新するロックの礎を築いたのだ。その影響は、イエス、ジェネシス、ラッシュといった70年代の巨人が発表した作品から、マーズ・ヴォルタ、オーペス、マストドンといった現代の精鋭の作品にまで至る。そして、ブルーフォードが示唆するように、プログレの最初の叫びは力強いものだった。



たんなるひとつの楽曲である以上に、「スキツォイド・マン」は7分半にわたるバンドの動機を示すステイトメントだ。ロックの力強さ、ジャズの即興性、クラシックの精密さが同じ目標に向かって動員されているのだ。楽曲はうなるような、不吉なプロトメタル的リフとともに始まる。ギタリストのロバート・フリップとアルトサックス奏者のイアン・マクドナルドが奏でるこのリフは、地獄のファンファーレのように鳴り響く。バンドがいったん鳴りを潜めると、残るのは刺すようなワンコード。そして、グレッグ・レイクの歪んだ声が、ピート・シンフィールドによる残忍にも予言的な、ヴェトナム戦争時代の対立と腐敗を描いたイメージを怒鳴りだす。

Cat’s foot, iron claw
Neurosurgeons scream for more
At paranoia’s poison door
Twenty-first century schizoid man

猫の足、鉄の爪
脳外科医師が「もっとだ」と叫ぶ
パラノイアの毒々しい扉に向かって
21世紀のスキッツォイド・マン

詞の描き出すヴィジョンは激しさを増すばかりだ。

Blood rack, barbed wire
Politicians’ funeral pyre
Innocents raped with napalm fire …

血塗れの棚、有刺鉄線
政治家を火葬する薪の山
ナパームの炎に陵辱される無垢の人びと…

ここでバンドは長大なインストへ逸脱してゆく。クリームがカウント・ベイシーをカバーしているように聴こえたかと思えば、次は世界で最もやかましく、タフな室内楽のようにも聴こえてくる。メインリフに戻ると、破滅を予告する最後のヴァースが始まる。

Death seed blind man’s greed
Poets’ starving children bleed
Nothing he’s got he really needs …

死の種、盲目の男の強欲
詩人どもは飢え子供たちは知を流す
必要なものはひとつも得られぬまま…

Translated by imdkm

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