トランプのコロナ定例会見から考える放送ジャーナリズム「ライブ感より大切なもの」

ウソの津波に太刀打ちできない真実

ーCNNのダニエル・デイル氏(をはじめとする常勤の事実確認担当者)の仕事には――うらやましいとは思いませんが――尊敬と称賛を贈ります。ただ時々、彼は巨大な津波をティースプーンで押し返そうとしているような気がするんです。誤報や偽情報に立ち向かうには別の方法を考える必要があります。事実確認をして「この情報は間違っています、理由はこうです」と言うだけでは勝てないように思うのですが。

私が見た限り、実際に事実確認が何らかの影響やポジティブな影響を与えることを示す証拠はひとつもありません。よく言われることですが、ソーシャルメディアが実験的にやっているように、何かが嘘であるという投稿すると、アクセスが増えるんです。野次馬みたいなものですね。「へぇフェイクニュースなんだ? ちょっと読んでみよう」という具合に、知りたくなるものなのです。

弾劾裁判が行われていた頃のある週末、日曜のあらゆる政治ニュース番組での生放送インタビューを調べたことがあります。FOXニュースのゴールデンタイムについては様々な意見があると思いますが、クリス・ウォレス氏は非常に腕の立つインタビュアーです。その日のゲストはスティーヴン・ミラー氏でした。ミラー氏はそのコーナーの間ほとんどしゃべり通しで、自らの主張を1度や2度ならず、6回、7回、8回と繰り返していました。司会者が「ですが、それは事実と反します」と言うのもお構いなしに、オンエアされていたのです。

もうひとつ、事実確認について非常に重要なことは、報道メディアは(今)、大統領やその仲間から4年間も信頼性を容赦なく、徹底的に攻撃されながら活動している、ということです。メディアは誠意がないと言われ、大衆の敵と呼ばれ、売国奴扱いされた。相当な数のアメリカ国民が、報道機関の行う事実確認を即座に却下します。なぜなら多くの機関、とりわけ報道メディアを貶め、不信感を植え付けようとする試みが行われてきたからです。


ホワイトハウスのコロナウイルス対策チームのメンバーと共に、記者会見に臨むドナルド・トランプ大統領 2020年4月4日、ワシントンD.C.にて。(Photo by Sarah Silbiger/Getty Images)

Translated by Akiko Kato

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