トランプのコロナ定例会見から考える放送ジャーナリズム「ライブ感より大切なもの」

嘘つきがTVに出られる理由

ーコロナウイルスの会見中継が我慢の限界を超えたのはなぜですか?

今ほど家庭のテレビに流れて来る情報が重要で、必要不可欠なときはなかったと思います。その情報源が汚され、悪用されているのを目にするのは、特に我慢がならなかったのです。

嘘をつくとわかっている人間を生放送に出演させるのは、私に言わせれば報道の業務上過失です。「昔ながらの」――他にいい言葉が見つからないのですが――ジャーナリストなら、こんなことはないでしょう。パソコンの前に座って「うーむ、生物医学の専門家が必要だな。あの男に連絡してみようか。今まで10回嘘をつかれたが、今度は何と言うつもりか見てみよう」とはならないはずです。絶対に電話などかけませんよ。

それでも、クリス・クオモ氏(CNNのキャスター)やジョージ・ステファノプロス氏(ABCのキャスター)、チャック・トッド氏(NBCのキャスター)に平気で嘘をつく人々がいる。しかもそういう人たちが、何度も何度もTVに出演している。こうした事態は根本的に間違っています。

ーではなぜ、パッと思いついたところで言うなら、ケリーアン・コンウェイ氏は何度も何度もテレビに出演しているのでしょう?

ケリーアン・コンウェイ氏やスティーヴン・ミラー氏は、ドナルド・トランプ大統領と極めて親しい人物として知られています。彼らは大統領執務室に影響力を持っている。政策を左右する力があります。今まで繰り返し行使されてきました。なので、ジャーナリストは自然とそのような人々に話を聞きたがるのです。大統領が何を考えているのか、どんな決定を下したのか、そうした決定を下したのはなぜか、詳しく知りたいからです。チャンスがあるのにそうした人々と言葉を交わさずにいるのは、どんなジャーナリストにとっても非常に難しいでしょう。

言うまでもないことですが、ホワイトハウスでは今でも報道管理が行われていて、どの話題について誰が報道陣の前で話すかを記者が指名することはできません。そのため、ケリーアン・コンウェイ氏がホワイトハウスの前で会見するとなれば、耳を傾けるなと言うのは難しいものがあります。ついさっきまで執務室にいて、大統領や補佐官と話をした人物なんですから、当然話を聞きたいです 。

私の論点は、その後どうなるのかもろくに考えず、反射的に生出演させているのではないか?ということです。 特に今我々が直面している状況では、情報が生死を左右します。10分多く考えたところで損があるとは思えません。その10分で、より正確な情報、より優れたコンテンツやニュースを視聴者に届けられるでしょうし、結局はそれが我々の使命なのです。

Translated by Akiko Kato

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