トランプのコロナ定例会見から考える放送ジャーナリズム「ライブ感より大切なもの」

生中継にこだわる理由

ー今おっしゃった葛藤――大衆への情報伝達と、娯楽や視覚的価値――は永遠の課題ですね。トランプ時代(とでも言いましょうか)では特にそう感じますが、コロナウイルスの定例会見についてはさらにひしひしと痛感させられます。というのも、視聴率という観点で言うと、あれらの会見は視聴率がものすごく高いんです。どうバランスを取れば良いのでしょう?

バランスを取るのは非常に困難です。ですから私もネットワーク局に、会見を生中継しないよう要請したのです。ですが現実問題、ひとつのネットワークが単独で断行するのは極めて勇気のいる決断でしょう。大多数の視聴者は、自分の見たいものを見るためにチャンネルを変えるだけですから。

視聴率に関してはひとつ反論させてください。ジャーナリズムに関わる人間は誰もが、視聴者の獲得に一生懸命です。この点に関しては悪いとは思っていません。ローリングストーン誌の記者をしているあなただって、読者に自分の書いた記事をクリックして欲しいでしょう。雑誌を買って欲しい、自分の記事を読んで欲しい。誰かに影響を与えたいと思っているはずです。

報道番組でこれまで一緒に働いてきた経営陣の中で、ひたすら金儲けを目的としていた人間は誰もいないと思います。もちろん頭の片隅にはいつもあります。我々も予算は限られていますし、番組の人気も上げたい。ですが、それが一番の目的ではありません。

もうひとつ覚えておいていただきたいのは、今の時代、ホワイトハウスの記者会見のようなことがあると、実はネットワークにとっては金銭的に損していることになるのです。なぜなら、その(記者会見)を中継している間、局はCMも挟まずに何時間もオンエアすることになるからです。TV局やケーブルテレビがお金を稼ぐ時間が、こうした事情で消えてしまう。視聴率のために記者会見を中継しているというのは――会見の視聴率からお金は入って来ないんです。ゆくゆくは累積効果も期待できるかもしれませんが、その瞬間に収入は発生していないんです。

Translated by Akiko Kato

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