川谷絵音が振り返る2022年の音楽シーン

川谷が気になる国内アーティスト

―国内のアーティストでは、他に誰が印象に残っていますか?

川谷:一番聴いたのは、自分のリストで次点に入れたadieu(上白石萌歌)の「灯台より」。作曲した柴田聡子さんはご本人のアルバム(『ぼちぼち銀河』)もよくて、メロディセンスがすごいんですよね。思ってない方向に行くので、作品が出るたびに聴いちゃいます。楽曲提供でもそのセンスが活かされていて、曲作りが上手いなと思いました。この曲もアレンジはYaffleくんですよね? 良い意味で泥臭いアレンジをしていて、藤井くんのときとは全然違う。こういう引き出しもあるんだなって。adieuの声もすごく好きで、betcover!!の書いた曲(「旅立ち」)も好きでした。betcover!!もよく聴きましたね。かなり尖ってるけど、adieuの曲も自分の曲もちゃんとポップスになっている。




―バンド系はどうでしょう? ちょうど取材前日(12月6日)はindigo la Endで、Saucy Dogとの対バンだったんですよね。

川谷:Saucy Dogは昔から脈々と続くテレキャスターの3ピースバンドというか。日本人が好きな系譜があるんですけど、その中でここ最近一番飛び抜けたバンドだなって。この系譜は下北沢にたくさんいるんですよ。僕がライブハウスでよくやってた10年前からずっと。

―僕がライブハウスに出てた頃からいたから、20年かも(笑)。

川谷:競合の数が多いぶん、そのなかから売れるのは狭き門なんですけど、たまに飛び抜けて曲が良いバンドが出てくるんですよね。あと昨日ライブを観て思ったのは、とにかく3人ともキラキラしていて。ライブハウスでやってるテレキャスの3ピースはちょっと陰があるイメージなんですけど、Saucy Dogにはそれがなくて。石原(慎也)くんは僕らみたいなとっつきにくいバンドの楽屋に一人で入ってきて「乾杯しましょう」とか言ってくれるし(笑)、ファンはあの人間力に惹かれてる部分もあるでしょうね。「シンデレラボーイ」(〈国内で最も再生された楽曲〉2位)はライブで聴いてもダントツのキラーチューンで、最初に聴いてすぐに「これは売れるだろうな」と思ったので、紅白出演も妥当な気がします。



―川谷さんがこれから期待するバンドは?

川谷:Bialystocksはいいですよね。ボーカルの​​甫木元空くんは映画監督で、昔インディゴの「ハルの言う通り」のMVを撮ってもらってるんですよ。もともと彼が昔撮った映像を観て、質感がすごくいいなと思ってオファーしたんです。そうしたら、数年後にバンドを組んでいて、「こんなに歌が上手かったの?」っていう(笑)。鍵盤のメンバー(菊池剛)がジャズ出身なのもあって高尚さとかお洒落さもありつつ、すごくキャッチーだから何かきっかけがあったらすぐ売れるだろうなって。

―現在は2人編成でライブではサポートを入れてますけど、非常に完成度が高いですね。

川谷:声もメロディもよくて、めちゃくちゃ才能あるなって。僕のラジオでも何回かかけてて、今一番新曲が気になる日本のアーティストですね。


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