川谷絵音が振り返る2022年の音楽シーン

藤井 風のバズは何をもたらす?

―次に、国内のランキングを見ていきましょう。BTS、Official髭男dism、YOASOBIという〈国内で最も再生されたアーティスト〉上位3組の顔ぶれは変わらずです。変化がわかりやすいのは〈国内で最も再生された楽曲〉の方ですかね。

川谷:Tani Yuukiくんの1位はちょっと意外でした。でもやっぱり、2022年は藤井 風くんの「死ぬのがいいわ」が衝撃的ですよね。



―〈海外で最も再生された国内アーティストの楽曲〉で1位。世界中でバイラルヒットを記録しました。

川谷:Spotifyの月間リスナーが1000万人を突破したんですもんね。米津(玄師)でも700万人とかだから、国内の限界はそれくらいだと思うんですよ。でも海外でバズが起きて、それがちゃんと跳ね返ってきてる。「死ぬのがいいわ」もめちゃくちゃSped Upされてますよね。

この曲はちょっと変わったメロディじゃないですか? 民族的なメロディというか。それが海外で流行るのはなんとなくわかるというか。もともと僕が「関ジャム」で(2020年ベストソングとして)「罪の香り」を紹介したときから、海外の人にも好かれそうなメロディだとは思ってたんですよね。「死ぬのがいいわ」は日本語ですけど、ちゃんと歌詞の意味も理解してTikTokで使ってる人も多いみたいだし。そういう現象も含めて、「邦楽でも行けるんだ」「日本語でも海外でこんなに流行るんだ」っていうのは勇気をもらったというか。めちゃくちゃいい話だなって。




―川谷さんは以前から、世界を意識するにしても「日本語の方がいい」ということは言ってましたよね。

川谷:これが英語だったら流行ってないと思うんですよ。日本語だったからよかったんだろうなって。このまま行ってほしいですよね。そのうち月間リスナーも2000万人とか行くんじゃないですか? そうなったら大事件ですよね。

―2022年のコーチェラのときLAに行ってたみたいだし、2023年以降で海外ツアーとかが実現したら、さらに増えるでしょうね。

川谷:海外のフェスにも出るでしょうね。愛されキャラでもあるし、あのルックスも含めて、それこそハリーみたいなスターになる可能性もありますよね。

―日本語で、あのメロディなんだけど、トラックはYaffleが手掛けていて、海外の音楽とちゃんと同時代性のあるものだったのも大きいですよね。

川谷:そこがね……やっぱり「ちょうどいい」ですよ(笑)。藤井くんが海外で売れてくれたらもっと日本の音楽も……韓国もそうだったじゃないですか? 先にBIGBANGとかはいたけど、BTSによってK-POPが全体的に底上げされた感じだったから。藤井くんによって日本の音楽全体がもっと海外で聴いてもらえるようになる可能性も大いにあるというか。日本語に対する違和感も減って、今より普通に日本の音楽を聴く人が増えるかもしれない。そういう意味でも、2022年の邦楽のなかではこれが一番うれしいニュースでしたね。

―近年シティポップのブームはあったわけですけど、現役バリバリで、日本でも人気があって、しかもアニメ関連曲以外でこれだけの状況になったというのは、これまでになかったことですもんね。

川谷:ちゃんと曲のパワーでこうなったわけだから素晴らしいですよね。これからどうなるのかを一番見ていたいアーティストというか。藤井くんが売れるのって、日本人として誇らしいというか、胸を張って好きだと言えますしね。海外でバズったのが藤井くんでよかったなって思います。

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