川谷絵音が振り返る2022年の音楽シーン

Ado、K-POP、ボーイズグループ

―日本人の海外進出でいうと、Adoはゲフィン・レコードとのパートナーシップを結びました。

川谷:それもびっくりしました。みんな海外に出ていこうとしていて、それはいいことだと思います。これまではもっとマイナーな人が海外に出ていくイメージだったけど、日本で一番再生されてる人たちが海外進出をめざすのはいいなって。過去にも宇多田(ヒカル)さんなどがいましたけど、今は(環境的にも)グローバルに出ていきやすいでしょうしね。まだまだK-POPにはグローバル化という視点では全然追いつけていないですけど、これから少しずつ変わっていくのかなって。



〈国内で最も再生された楽曲〉プレイリスト

―ちなみに、2022年のK-POPに対してはどんな印象ですか?

川谷:ベースが軸になってる音楽が増えましたよね。aespaの曲とかかなり強烈だし、LE SSERAFIMのデビュー曲もかなりベースが効いていて。ガチガチのヒップホップだったりもするじゃないですか? 去年のトップ10に選んだNCT 127「Sticker」もそうだけど、K-POPは普通に曲がかっこいいのでチェックしちゃいますね。譜割りとかも含めて、K-POPのあり方ががひとつ確立された感じもするので、さらにここからどうなるのか。2022年もいろんなグループが出てきましたけど、BTSが活動休止している間に誰が飛び抜けるのか。2023年に向けてみんないろいろ考えてそうですよね。

―川谷さんのリストには、Red Velvet「WILDSIDE」が入っていました。

川谷:Red Velvetの曲はメロディがめちゃくちゃ良くて、アレンジも好きなんですけど、曲にはよりますがK-POPっぽいベースが効いたサウンドじゃなくて、もうちょっと日本に近いというか。下半期のK-POPは、わりとコード進行がエモめの曲が増えてきた印象で。BTSのアルバムを聴いてもそう思ったんですよ。今までなかったエモめのコード進行、いわゆるちょっと感傷的なコード進行が増えてて、「日本っぽいな」と思ったんですよね。「死ぬのがいいわ」のコード進行とメロディの噛み合わせも海外ほどシンプルじゃないし、もしかしたら、そっちにシフトしてきてるのかなって。日本はもともとコード進行が複雑な曲が多いから、そういうのもトレンドになり得るんじゃないかって、ちょっと思ったんですよね。BTSのアルバム(『Proof』)で新曲を聴いたとき如実にそう思ったし、Red Velvetの曲にもそれを感じました。

―K-POPは相変わらず世界的人気で、2022年はBTS、BLACKPINK、Stray Kidsの3組がビルボードの週間アルバムチャートで首位を獲得しています。

川谷:ベースの効いた今のK-POPは「BLACKPINK以降」な感じがするから、今はまだそういう曲が多いですけど、ここからもっとエモめになっていきそうな気がします。可愛いK-POPはもうあんまり流行らなくて、今はかっこいい方がトレンドだけど、そこも「ちょうどいい」中間が出てくるかもしれない。



―2022年は日本でもボーイズグループが増えましたよね。

川谷:BE:FIRSTはフィーチャリングの相手を見ても海外志向がありますよね。でも、すでに日本での内需はすごいことになってるわけじゃないですか? ここからどういう方向に進んでいくんだろうなって。『推しが武道館いってくれたら死ぬ』が話題になったりもしたように、2022年は日本の推し文化がすごかったですよね。推しのために何かをするっていう文化がかなり加速した気がして。



〈国内で最もシェアされた楽曲〉プレイリスト

―〈国内で最もシェアされた楽曲〉のトップ10をBE:FIRST、JO1、INIの3組が独占。これも「推し文化」の表れと言えそうですよね。

川谷:ただ内需がありすぎるのも難しいというか。そもそも韓国は、内需が乏しかったから海外に出ていったわけじゃないですか? 内需がありすぎると外に出ていきづらくなるんじゃないかとか、分岐点にいる感じはしますよね。そういう点も含めてこれからが楽しみではあります。

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