AK-69が語るヒップホップの響かせ方 ラップと歌の二刀流で続けてきた者の強み

ー新作の『The Race』が前作『LIVE:live』から10カ月というスパンでリリースされました。制作はどういうところから始まっていきましたか。

ライブが飛んでいる中、みんなが待っていることと言ったらアルバムになると思うし、どうせ出すんだったら6月9日に間に合わせたいと思って。それで強行突破のスケジュールで挑んだんですけど。今回のアルバムはコロナ禍だから音源を作ろうっていう感じもなく、大前提として、ただ自分が作りたいから作った感じのアルバムなんですよね。25年のキャリアの中で、前作から1年切って出すっていうのは異例だし、2カ月という制作期間で作ったのも初めてで、まさに衝動のまま作った作品です。



ー何故そうしたエネルギーが湧いてきたんだと思いますか。

コロナ禍で悲観的になっている人がたくさんいますし、俺らも予定していた47都道府県ツアーでは、少なく見積もっても5000万ぐらいの売上があったはずなので、ビジネスだけで考えたら悲観的になってもおかしくない状況ではあるんですけど。やっぱりこの期間で何をやったかということが物凄く大事だと思うんです。

ーそれが昨年の名古屋城での単独公演を行った配信ライブですね。

ライブハウスツアーが全部飛んだ状態で、ああいう採算度外視のライブをやるっていうのは、たぶん大抵の人が決断できないことだと思うんです。でも、俺たちはエンターテイナーとして使命を感じたんですよね。俺はアイドルでもないし、マスに受ける音楽を追求しているわけでもなくて、魂のメッセージを真髄としてやってきているから。こういう時こそそれをみんなに投げかけることが大事だと思いましたし、そこで得たファンからの信用って結果にはすぐ出てこないものなんですけど、結局はそれが一番大事なんじゃないかと思うんですよね。

ーアーティストとして、今後かけがえのないものとして活きてくると。

急ピッチでアルバムを作ったこともそうですし、批判されるリスクがあってもゲリラライブをやってみる。そうやってヒップホップのおもしろさだったり、どうやったらみんながワクワクすること届けられるのかってことを真剣に話し合って、ビッグアーティストたちが何もできずに止まってる中でも、俺らは細かいジャブを打ち続けてきたんですよね。で、本質的なものしか残らないような時代で、偽物とか商業的なものがことごとく倒れていく中でも、俺らはこうやってやれているってことに自信が持てたのは凄く大きくて。俺がヒップホップのゲームで最前線に立ってから15年ぐらい経つんですけど、コロナ禍だからこそ、積んでるエンジンの違いみたいなものを感じたんです。それで凄く強気になれたというか、コロナ禍でも倒れずオフェンシブな姿勢を崩さなかったことで、改めて格の違いを見せてやろうという気分になりました。

Rolling Stone Japan 編集部

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