高田渡が探った自分のルーツ 佐久間順平とともに振り返る

BGM(夕暮れ(LIVE)/ 高田渡

田家:今流れているのは、アルバム『Best Live』から「夕暮れ」。自分の場所からはみ出してしまった人の歌です。作詞は黒田三郎さんと高田渡さんです。さきほど、高田渡さんの蔵書の話をされていましたね。詩人の本がたくさんあった。

佐久間:本棚が、レコードと詩集しかないくらいでした。文学的なことでも、自分のルーツを探ってたんじゃないかなと思うんです。詩人って自分の言いたいことを書くわけじゃないですか。渡さんも自分の歌いたいことを歌うという点で、詩人が何をやっていたのか、何を言いたかったのかというのをすごく読んでたんじゃないかなと思います。

田家:そういう日本の詩人の作品にとても詳しかった渡さんは、自分でも詩集を出していました。

佐久間:自費出版で『個人的理由』という本。その中に一つすごくいい詩があって、曲をつけてみたいと思って作ったのが「夕暮れ」という曲です。

田家:同じ「夕暮れ」というタイトルですが、こちらは作詞が高田渡、作曲と歌が佐久間順平さんという「夕暮れ」です。今日は、高田渡さんを忍びながら最後にこの曲を聴きましょう。佐久間順平さんで「夕暮れ」。



田家:この詩に曲をつけていらっしゃる時に、どんなことを思い浮かべましたか?

佐久間:吉祥寺の町の夕暮れに渡さんが立って嬉しそうにしている感じ。それと、僕の家に遊びに来てくれた時に昼からお酒を飲んで夕方には出来上がって、じゃあ帰るよって言って見送る時にちょうど夕暮れでね。夕焼けの赤じゃなくて、空がだんだん紺色からダークになっていく濃紺色というのかな。そこを指差して、この色だこの色だ、って言っていたのがすごく残っていて。この詩集『個人的理由』を見た時に、これがあのことか! と結びついたというか。

田家:なんで彼は自分で歌わなかったんでしょうね。

佐久間:実はこれはカバーで、別の若い人が歌っていたんですよ。それはフォークソング調じゃなくてポップス調なものでした。

田家:なるほど。でもこういう風に順平さんにカバーしてもらえるのは、彼にとっても本望ではないでしょうか。順平さんは高田渡さんの何を伝えていきたいですか?

佐久間:やっぱり歌ですね。自分が生きていて、何を思って、何を感じて、何を表したいか? それを高田さんは追求していたと思います。前にライブ盤を出した時に渡さんから電話があったんですが、その時彼はお酒を飲んでいなくて。飲んでいない時の声がすごく冷たく感じられたんですよ。「CD聴きました、歌が聴こえてきません」と。

田家:厳しいですね。

佐久間:聞いた時はもちろんショックだったんですけど、ちゃんと聞いてくれたんだな、大事なことだなと思って。僕はそれを追求していきたいなと思ったんです。

田家:なるほど、追求していってください。ありがとうございました。

佐久間:ありがとうございました。

Rolling Stone Japan 編集部

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