ポール・マッカートニー×テイラー・スウィフト対談「誰かをそっと支えるような曲を書きたい」

テイラー・スウィフトとポール・マッカートニー(Photo by Mary McCartney for Rolling Stone)


架空のキャラクターと想像力

ポール:でも君のいう通り、夢を見ることはすごく大切だし、今は特にそうだと思う。現実逃避の手段が必要なんだ。「逃避主義」っていう言葉にはネガティブなイメージがあるけど、今は絶対にそんなことはないと思う。本を読んでいると、目を上げて現実に戻ってくる瞬間までその世界に没入することができる。それって素晴らしい体験だと僕は思う。僕は寝る前に本を読むことが多いんだ。現実の世界に戻ってきて、そのまま眠りに落ちる。ファンタジーや願い事に満ちた夢を見るのって、すごく素敵なことだと思う。

テイラー:登場人物を自分で作り上げるんですよね。私は今回のアルバムで初めて、架空のキャラクターや、実在する他人を主人公にした曲を書いたんです。「ザ・ラスト・グレイト・アメリカン・ダイナスティ」っていう曲の主人公は、ものすごく壮絶な人生を歩んだある相続人女性で……。



ポール:それは架空のキャラクターなの?

テイラー:実在した人です。私が今住んでいる家で昔暮らしていた人で。

ポール:実在した人なんだね。あの曲を聴いて、「これは誰のことなんだろう?」って思ってたんだ。

テイラー:レベッカ・ハークネスっていう人で。私はロード・アイランドに家を買ったんですが、彼女は昔その家を所有していたんです。私はそれがきっかけで彼女のことを知ったんですが、彼女はスキャンダラスなことで広く知られていて。私は彼女に、自分と共通する部分を感じたんです。あと実は、「エリナー・リグビー」にも影響を受けていて。ある街に住む人々の人生が交錯してひとつの物語を成すっていうのを、私は自分の曲で長い間やっていなかったんです。私の音楽はずっと、ものすごくパーソナルなものだったので。

ポール:うん、ずっと恋人との別れについての曲を書き続けるわけにはいかないもんね。

テイラー:風向きが変わるまではそういう曲を書いていたんですけどね(笑)。今でもそういう曲を書くこともあるし。私はクールな別れの曲が好きなんです。私の友達の誰かが世界のどこかで別れを経験するたびに、そういう曲を書きたくなっちゃうんですよね。

ポール:ジョンとのことを思い出すよ。僕たちはフォーミュラを確立しないように意識してた。だから今でも、僕には決まったやり方っていうのがない。その時の気分次第なんだ。だからあるキャラクターになりきって曲を書くっていうのは大好きなんだけど、「これは誰をモチーフにしているんだろう?」っていつも思うんだ。「エリナー・リグビー」は、僕が子供の頃に知ってたある老女がモデルになってる。どういうわけか、僕は何人かのおばあちゃんとすごく仲良くしてたんだ。家族でもないのに、どう知り合ったのか覚えてないんだけどさ。どこかでばったり会うたびに、彼女たちの買い物に付き合ってたんだ。

テイラー:素敵ですね。

ポール:楽しかったよ。座っておしゃべりするたびに、彼女たちはすごく興味深い話を聞かせてくれた。それが僕のお気に入りの時間だった。僕は戦時中に生まれたから、彼女たちが参加した戦争にまつわるエピソードも多かった。よく会ってた女性の1人が鉱石ラジオを持ってたんだけど、僕は興味津々だった。戦時中は多くの人がそういうラジオを自作してたんだ、鉱石を使ってね。(「トワイライト・ゾーン」のテーマを口ずさむ)

テイラー:初めて聞きました。知ってたら掘り下げようとしたかも。

ポール:ウイルスとロックダウンで何もかもが制限されている今って、驚くほど戦時中の状況と類似点が多いんだ。誰もが影響を受けてるっていう点においてもね。エイズやSARS、鳥インフルエンザも深刻だったけど、被害を受けたのは一部の人々だった。でも今の状況には、文字通り世界中の誰もが影響を受けてる。それはこのウイルスに固有のことだと思う。イギリスは数多くの戦争を経験し、女王やチャーチルだけじゃなく、僕の両親も巻き込まれた。誰もその影響から逃れられないからこそ、1人1人が自分なりに乗り切る術を見つけないといけない。君が『フォークロア』を、僕が『マッカートニー Ⅲ』を作ったようにね。

テイラー:大勢の人がパンを焼き始めたらしいですね。気を紛らわせられるなら何でもいいってことですよね。

ポール:昔の人が鉱石ラジオを作ったようにね。後で一応調べてみるけど、確か本物の鉱石を使ってたはず。鉱石ラジオなんて大げさな名前をつけたもんだって思ってたけど、僕らを魅了する本物のクリスタルが実際に使われてるんだ。

テイラー:ワオ。

ポール:そのクリスタルが受信機の役目を果たすんだ。2局の電波をキャッチすることができた鉱石ラジオは、当時の人々の主な情報源になってた。「エリナー・リグビー」では、そのお婆さんのことを考えながら自分の好きな言葉を紡いで、「結婚式が行われた教会でお米を拾い上げた」り、マッケンジー神父が「靴下を編む」っていう情景を描いた。彼は敬虔なキャラクターだから、よりストレートに「聖書を用意した」とすることもできた。でも「靴下を編んだ」としたほうが彼の個性が現れると思ったし、より想像力を掻き立てる。音楽のマジックって、そういうことだと思うんだ。真っ暗で何もないところから、一輪の美しい花を生み出すような。刺繍も同じだね、そういう意味では。

テイラー:テーブルを自作することも。

ポール:その通り。

Translated by Masaaki Yoshida

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