ポール・マッカートニー×テイラー・スウィフト対談「誰かをそっと支えるような曲を書きたい」

テイラー・スウィフトとポール・マッカートニー(Photo by Mary McCartney for Rolling Stone)


コロナ禍での作曲「自分のために作る」

テイラー:あなたの新作を聴かせてもらったんですが、すごくいいと思いました。作曲からプロデュース、全ての楽器の演奏までをあなた自身が担当したそうですが、柔軟さが曲にすごく現れていると思います。「その気になれば全部自分1人でできる」っていう、あなたの才能を改めて見せつけられた気がしました。

ポール:僕自身はそんなつもりはないんだけどね。何年もやってるうちに、いろんな楽器の弾き方を覚えていったってだけでさ。僕の生家には父が弾いてたピアノがあって、自然と興味を持ったんだ。「ホエン・アイム・シックスティ・フォー」のメロディーなんかは、僕が10代の頃に書いたんだ。

テイラー:ワオ。

ポール:ビートルズがハンブルクにいた頃、いつもドラムキットが身近にあったから、僕は機会を見つけては「ちょっと叩いてもいいかな?」みたいな感じでプレイしてたんだ。練習するっていう感覚じゃなくて、ただ楽しんでた。だから僕は右手でプレイするんだよ。一番最初に手にした楽器はギターだったけど、ベースやウクレレ、マンドリンも要領は同じだ。それでいつの間にかいろんな楽器を弾くようになっていたけど、本当にしっかり弾けるのは2つか3つだよ。

テイラー:謙遜しているように聞こえますけどね。私はアルバムを聴いて、あなたが都会の喧騒から離れたところで隔離生活を送りながら、DIY的アプローチを身につけていく様子を思い浮かべたんです。私自身もパンデミックの間に、以前は誰か他の人にやってもらっていたことを自分自身でやるっていうメンタリティを身につけたんです。レコーディングがどんな風に進められたのか、すごく気になります。

ポール:僕は恵まれてるよ。自宅から20分くらいのところにスタジオを持ってるからね。ロックダウンの間、僕はメアリーと彼女の4人の子供と彼女の夫と一緒に、羊牧場の敷地内で隔離生活を送ってた。メアリーは料理が上手だから助かったよ。エンジニアのスティーヴと、機材を管理してくれてるキースにはスタジオに来てもらっていたけど、みんな互いにちゃんと距離を取って接してたよ。だからレコーディングは僕ら3人で進めた。ある映画の劇伴を担当することになってたから、まずはそのインストゥルメンタル曲を仕上げた。それが片付いた後、勢いで何となく作業し続けたんだけど、結局それがアルバムの1曲目になった。そこからどうするか少し考えた後、アイデアらしきものが浮かんだから、それを形にすることにした。大抵は作曲に使ったピアノかギターのパートから始めて、ドラムやベースを足していくうちにレコードの全体像が見えてきたから、それに沿って少しずつ音を重ねていった。楽しかったよ。

テイラー:すごくクール。





ポール:君のレコードではどうだったの? 君はギターとピアノを自分で弾いているよね。

テイラー:自分で弾いている部分もあるけれど、大半は私が大好きなザ・ナショナルというバンドのアーロン・デスナーとの共同作業だったんです。1年ほど前に彼らのコンサートに行ってアーロンと話した時に、曲作りのアプローチについて訊いたんです。私は好きなアーティストに会うと、いつも同じ質問をしていて。彼の答えはすごく興味深かった。「メンバー全員がそれぞれ異なる場所で暮らしているから、曲は僕が書いてる。それをリードシンガーのマット(・バーニンガー)に送って、彼がトップのラインを考えるんだ」。すごく効率的だって思ったから、いつか試してみたいアイデアとして頭の片隅に留めておくことにしました。「これはいつかやってみよう」みたいなアイデアを、私はいつもストックしてるんです。いつかアーロン・デスナーと曲を書くっていうのも、そのひとつでした。

ロックダウンが始まった時、私はロサンゼルスにいました。だから隔離生活を強いられてはいても、決して最悪の環境というわけではなかった。4カ月ほどそこに滞在したんですが、その時にアーロンにメールを送ったんです。「ロックダウンが続いている間に、一緒にレコードを作れないかと思ってて。私は今すごくクリエイティブなモードに入っていて、何かを作りたくてウズウズしてるの。うまくいくかどうかはわからないけど……」

ポール:うん、わかるよ。それが形になるかどうかは問題じゃなく、とにかくやってみることが大事なんだよね。

テイラー:そう。それに彼も、パンデミックのせいで頭がおかしくなってしまわないように、インストの曲を書き溜めていたらしくて。30曲分くらいをファイルで送ってもらって、一番最初に開いたのが「カーディガン」になったんです。そこからはノンストップで作業が進んでいきました。



テイラー:アーロンは曲を書き上げる度にフォルダにアップして、私がそれに歌を乗せるんだけど、その背景や曲名、どこをコーラスにするかといったことを彼に伝えてはいませんでした。最初のうちは来年の1月頃にアルバムとして発表できればと思っていたんですが、思った以上に早く完成して、結局7月にリリースしました。従来のルールはもう存在しない、そう思ったんです。以前の私は、本当にたくさんのことを気にかけていました。「この曲はスタジアムでどう響くか?」「この曲はラジオでヒットするか?」といったようなことを。でもふと思ったんです。そういうことに一切縛られなかったら、どういう作品が生まれるんだろうって。その答えが『フォークロア』だと、私は考えているんです。

ポール:仕事としてじゃなく、自分自身のために作ったレコードということだね。僕のアルバムにもそういう部分があるんだ。映画の劇伴曲を作り終えた後、以前からあったアイデアを形にすることも考えたけど、僕はひとまず帰宅することにした。少し経ってから、あの未完成のアイデアをどうするかっていう話になったんだけど、改めて聴いてみると「これは面白いものになるかもしれない」と思った。何の縛りもない状態で始まったから、「テープループをやってみよう。曲とそぐわなくてもいいや」みたいな感じで、ただ自分が興味があることをどんどん試していったんだ。テープループも含めてね。

それがアルバムになるかどうかは気にしなかった。自分なりに制御したつもりでも、曲が8分くらいに膨れあがったりするんだ。そんな時はいつも、「とりあえず今日は家に持ち帰るよ。メアリーが食事を作ってくれてるし、孫たちは今頃はしゃぎまわってるだろうしね」みたいにしてた。メアリーの夫のサイモンから「今日はどんな1日でしたか?」って聞かれたら、その日に録った曲を携帯でみんなに聴かせるんだ。それが習慣になってた。

テイラー:ものすごくアットホームですね。

ポール:8分は長いと思うかもしれないけど、僕は誰かに聴かせる曲が3分で終わってしまうとフラストレーションを覚えるんだ。だからつい長くなってしまうんだよ。

テイラー:ギアが入ると止まらなくなってしまうんですね。

ポール:自然と手が動き続けるんだ。家に帰って皆の前で1日の成果について報告するんだけど、作業途中のものを聴かせる場合もあれば、完成した曲を披露することもあったね。

Translated by Masaaki Yoshida

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