三浦大知が今こそ語る愛の話、27作目のシングルで到達した新境地

目に見えないものを「ない」とは言いたくない

―「尊重する」って、どういうことだと思いますか?

うーん……自分から見えてる主観だけじゃなくて多面的に物事を捉えるっていうことかな。1つの情報だと限定的な見方になってしまうので。例えば、自分に嫌なことを言ってきた人がいたとします。でもその人は、いつもはそんなこと言わないけどたまたまその日朝から体調も悪くて、誰かに傷つけられてすごい嫌な気持ちでいて、僕に強い言葉で当たってしまった。そういうことって人間だからあると思うんですよ。自分が「それは違うと思うな」という意見を持つのはいいけど、だからってその人を攻撃していいことにはならない。その人もその人の正義からそういうことを言っているわけだから。そんなふうに新しい価値観を自分の中に許容する、っていうことが尊重し合う世界につながるのかなと思います。

―普遍的な言葉の解釈についてもう1つ聞かせてください。大知さんの表現する「愛」のスケールがどんどん大きく、優しくなっていってる印象を受けるんです。今の大知さんにとって愛とはどういうものですか?

自分も答えが出てない、愛ってなんだろうっていう気持ちがあるから愛について書きたいんだと思う。ただ、今の意見を聞くと、自分が親になったということも大きいのか、人と人とを見ていて愛について考える瞬間は増えたかもしれないですね。

―作詞者として「愛」という言葉をどう捉えて使っていますか?

俺は、目に見えないものを「ない」とは言いたくないなと思ってて。目に見えないものって誰も確認できてないことだから、あるかないかわからないんですよ。これ、何年も昔に聞いた僕の好きな話なんですけど、アメリカのとあるラジオ局でパーソナリティーが子供からのメッセージを受けて答えるんです。そのメッセージは「僕はサンタを信じている。でも友達に『誰も見たことないじゃん。いないよ』と馬鹿にされます。僕はいると思ってるし、いると信じたい。それについてどう思いますか」という内容で。そしたら、DJの人が「誰も見たことないものは、いるのかいないのかわからないってこと。自分がいると思えばいるし、いないと思えばいないし、自分が信じた通りになる。目に見えないものを“ない”とするのは違うんじゃないか」と。その話を聞いた時に、すごく素敵な考え方だなと思ったんですね。ただ見てないだけだから、もしかしたらあるかもしれないじゃないですか。どちらも可能性はゼロじゃない。

愛もそれと同じで、目に見えないんで感じにくいし、言葉や態度で表されてそれを愛だと感じる時もあれば感じられない時もあって。愛が一体何なのかわかんないけど、でも僕は“ある”んだと思うんです。それは人を思いやる心だったり、この人を助けたいって気持ちだったり、自分のことを好きと思うことだったり、いろんな愛がきっとこの世の中には“ある”。そんなふうに信じていたい。目に見えないものに対してそんなには綺麗事だって笑われたとしても、この歌を歌って誰か1人にでも愛が届いたらいいなって思うこの気持ちは嘘じゃないから、何を言われても信じていたいなっていう気持ちが最後の歌詞になってるんです。

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