三浦大知が今こそ語る愛の話、27作目のシングルで到達した新境地

「笑われてもいいからちゃんと愛の話をしたかった」

―タイトルは、惹かれるとかねてからおっしゃっていた、米アリゾナ州に広がる渓谷アンテロープキャニオンのことなんですね。

行ったことはないんですけど景色としてすごく好きで。風や雨で岩が削られていって、それがきれいな模様になっていて、削られた様を見て感動するっていう。今年はみんなそれぞれの中にある愛や心が削れていく瞬間がとてもあったと思うけど、でもその削られた愛みたいなものはどっかに届くって俺は信じたいし、削られたからってその愛はなくなったわけではなくて、その削られた愛を見てまた愛を感じてくれる人がきっとこの世の中にはいる、と。あの景色とリンクするところがあったのでこのタイトルを付けました。

―先の見えない不安や孤独を1人で抱えている人も多く、ショッキングなニュースも相次いでいる昨今。そうした出来事に大知さんはどう感じましたか。

うーん、本当にいろんなことが重なった年だと思うんですよね。自分と向き合うってことがプラスに働くこともあればマイナスに働くこともある。人って生きてく上で、目の前にやるべきことがあるからなんとか保てるっていう部分はすごくあると思ってて。それがなくなった時に、自分はどう生きていくかっていう答えのない大きなものと向き合うことになった。それって本当にしんどいというかパワーが要るじゃないですか。その時に押しつぶされそうになる人って、自分もそうだしいっぱいいると思うんですよね。だからそういう人に、あなたはちゃんと愛されてるし愛は確かに周りにあるっていうことを感じてもらいたい。

曲の最後に「笑われても それでもただ信じて」と書いたんですけど、こういう時に理想論みたいなことを言うと、もっと現実見ろよという意見ももちろんある。でも、だからこそ、俺は笑われてもいいからちゃんと愛の話をしたかった。愛を届けたい人がいて、愛を感じてもらえるものを今歌わなければいけないと思ったんです。

―アーティストの場合は、自分と向き合う時間が普段から特に多いと思うんです。コロナ禍に自分自身を見つめる中で、大知さんはネガティブな方向には行かなかったということでしょうか?

それは、リリースするという出口があるからだと思います。ただ人生について自問自答するというのは答えの出しようがないですよね。曲を作って、それを誰かが聴いてくれて、良いと言ってくれてる人がいたら、その時の悶々とした気持ちは救われるじゃないですか。だから、それもない状態で自分と向き合わなきゃいけないっていうのはキツいですよね。正直考えてもしょうがないじゃんということを考えなきゃいけなくなっちゃったんだと思う、今年は。本当はただ生きていることがめちゃくちゃすごいことで、でもそう言えない状況もあったと思います。例えば、この中でもやれることを探さなきゃいけない使命感に駆られるとか。

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