レコーディングはこれまでで一番時間がかかった
―表立って何かやっているほうが前向きそうに見えるんですよね。
そうなんですよね。なんとなく何かしてる人のほうが前向きに見えてしまう雰囲気があるけど、そういうマインドにならなければ動かなくてもいいんですよ。そんなふうに焦りそうな時、この曲を聴いて自分には愛があるんだと気づいて、少し心が楽になったらいいなと思いながら作ってました。
―そのリリックに添えたのは、自身のアカペラと最小限のピアノと打ち込み。三浦大知史上最も削ぎ落とされた曲ではないでしょうか。
確かに。これは、数年前にハーモナイザーが流行ってて、そこから派生して「声だけの曲ができたらいいね」とUTAさんと温めていたアイデアでした。制作の初めはピアノが入っていたんですけど、1番はピアノなしでコーラスを積み、声だけにして2番からピアノが入ってくるっていうのがとてもエモーショナルなんじゃないかとなって、アイデアがここに生きてきたという。
―何層もコーラスを録って重ねたレコーディングはどうでしたか?
今までで一番時間かかったんじゃないかな。声だけで聴かせるので細かい響きやラインがより重要で、そこの抜けがないかとか、ちょっと足そうかとか、上の成分はいらないねとかいうことを精査してやったので。
―「I’m here」(2020年1月リリース)も今作もそうですが、相手や自分そのものを認め肯定し受け容れるシンプルなメッセージの曲が続いています。そこにはご自身の考え方が反映されていたりするのでしょうか?
もちろん自分が思ってることでもあるんですけど、時代の空気感はありますね。この時代において歌いたいことを言葉にするとこういうことなのかなあ。
―自分のスタイルはこうだ!とかっこよく提示する曲も過去にあったので、今のモードだったりするのかなあと。
自分の人生は自分のものだと思うんですよ。決して誰かに決められていいものではない。
―まさにカップリングの「Yours」でそんなことを言ってますね。
その通りです。例えば、倫理的におかしいものは別として、自分の価値観と全く違う人と意見がぶつかった時、相手に対して「それは違うよ」って決めつけて言うべきではないと思っていて。相手には相手の正義があって主張していて、自分と意見が違うだけ。それぞれの選択や価値観を尊重していくべきだと思うんですよ。例えば、コロナの対策1つとっても正解があるわけじゃないから、どう行動してどこまでOKだと思うかは人それぞれで、どれも間違いではない。それをお互いに押し付け合うんじゃなくて、違う考えを許容し合って尊重し合うことが今とても大切なのかなと。