全米UFOカルチャーDEEP案内【長文ルポ】

「もうコソコソする必要はないってことだ」

彼はAlexaの電源を入れると、筆者に何か曲をリクエストするよう言った。オアシス、ストロークス、キラーズ等、かなりベタなものばかりを選んだがコーベルは興奮している様子で頭を上下に振り続けていた。「全部カッコイイな」

彼はこれらのモダンロックのスタンダードをひとつも知らないと告白した。彼が南カリフォルニアのバンドで何年もドラマーを務めていたことを考えると、これは奇妙に思えた。おそらく彼のアンテナは、UFOに関すること以外には反応しないのだろう。

他にすることが何もないため、我々はマジックマッシュルームを摂取することにした。コーベルは慣れた手つきで袋から取り出し、筆者に少量を手渡した。

「ただ楽しんでほしいだけさ。こいつを食えば、普段は見えない何かが見えるかもしれない」。彼はそう話す。

裏庭に向かう途中で、その効果が現れ始めた。コーベルは政府の人間から訪問を受けた時のことについて語り(その筋の仕事を探している人にアドバイスできそうなほど饒舌だった)、彼らが自分を監視している可能性は否定できないと言った。「嫁が1人で留守番してた時に来たこともあるんだ。言ってやったよ、『ふざけんな』ってね」

先日、コーベルとナップはジョー・ローガンのポッドキャストに出演し、3時間にわたってUFOの素晴らしさについて語り合った。しばらくの間、そのエピソードは国内ランキングの上位に留まっていた。UFOカルチャーは盛り上がりを見せており、同じ週にはニューヨーク・タイムズが、国防総省が未確認航空現象の調査のための特別部隊を発足させたことを報じた。ペンタゴン在籍時のエリゾンドの任務に似たそのプログラムは、調査結果を後に一般公開するとしている。

「もうコソコソする必要はないってことだ」。エリゾンドは同紙にそう語っている。「透明性は著しく向上するだろう」

だが同記事のハイライトは、正体不明の物体が過去に墜落事故を起こしており、その残骸は何十年間にもわたって研究され続けているというハリー・リードの証言だった。しかしあろうことか、その翌日に同紙は記事の内容を大幅に訂正している。リードの発言は正体不明の物体が過去に墜落事故を起こしているかも知れず、(もし存在するならば)その残骸について研究すべきであるという内容だった。あまりの落胆に、トロンボーンの寂しげなUFOムーブメントのテーマソングが聞こえてくるような気がした。

しかし、コーベルはまるでめげていない。彼は以降9カ月間にわたって、新たに行われる調査の内容(詳細は掲載不可)など、筆者に様々な情報を流してくれた。「UFOに対する見方を根底から覆すような大発見か、社会的地位のある人々が俺を騙そうとしてるかのどちらかだ。メディアの前で俺に恥をかかせようとしてるんだとしたら、とんでもなく悪趣味な詐欺だ。どっちなのか見極めないといけない」

だが、それはしばらく後に起きる出来事だ。筆者とコーベルは今、彼の自宅の中庭に寝転がって星を眺めている。幻覚が見え始め、広大な宇宙のどこかに存在する筆者にとっての答えが浮かび上がってくるような気がする。すると突然、コーベルが筆者の腕を掴んでこう言った。「あの光を見ろ!」

コーベルは宙を見つめる筆者の頭を、彼の自宅の方に向けさせた。そこには明かりが灯っており、人影が見えた。やがて明るさを増した光の下で、ガウン姿の女性がジュースをボトルからラッパ飲みしていた。それはコーベルの妻だった。

「な、彼女は実在するって言ったろ?」

その瞬間、筆者は信じることに決めた。

from Rolling Stone US

Translated by Masaaki Yoshida

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