全米UFOカルチャーDEEP案内【長文ルポ】

2019年9月20日、米ネバダ州レイチェルで開催された「Alienstock Festival」にて。参加者の女性たち。(Photo by Mario Tama/Getty Images)



UFO界の超重要人物、ジョージ・ナップ

この週末のイベントに大きな期待を寄せているコーベルは、3歳児が投げつけたスーパーボールかのように車の中で跳ね回っている。夜には彼の作品が巨大なスクリーンで上映される予定であり、翌日にはボブ・ラザーが非公開の場所からFaceTimeで参加することになっている。だが、現時点で会場にいるのはせいぜい100人程度。日没が迫っていた。

そしてUFOムーブメントにおける洗礼者ヨハネ、ジョージ・ナップがやって来た。ソファに腰掛けた彼は、とても疲れているようだった。30年以上に渡って宇宙人を追い続ける歩く辞典のような存在は、疲れていて当然なのかもしれない。70年代後半にラスベガスからバークレーに移住した彼は、空港までの道順も知らなかったがタクシーの運転手として働き始めた。やがて彼はテレビのニュースレポーターとして、ゲームや政治、そしてUFO信者たちを取材するようになる。しばらくすると、彼は視聴率がゼロに近いであろう日曜の朝7時の公事番組の司会者に抜擢される。そしてある退屈な日曜、ゲストとして迎えたジョン・リアなる人物が番組で宇宙人について話すと、回線がパンク寸前になるほど問い合わせが殺到した。その後リアはナップに、つい最近エリア51で働き始めた人物を紹介する。それがボブ・ラザーだった。基地内に隠されている宇宙船を研究しているというその科学者は、素性がバレないように変装していた。

ラザーによると、Element 115というアイソトープが生み出す重力波によって周囲の重力を歪ませることで、その物体は尋常でない速度で飛行することができるという。ちなみに彼は、宇宙人が過去1万年間に渡ってレチクル座ゼータ星と地球を行き来しているという事実を知らされたと告白している。

やがてラザーは、素顔でメディアの前に出ることに同意する。ほどなくして公開された全9部からなるインタビューは、ラスベガスの住民を大いにざわつかせた。だが翌年、ナップとラザーは仲違いしてしまう。その原因は、ナップの自宅から2ブロック先のアパートに住む女性が始めようとしていた売春ビジネスを、ラザーが積極的にサポートしていたことだった。ナップは通報し、ラザーは執行猶予を言い渡されたが、2人は後に和解している。

ナップは現在67歳、ふさふさだった毛髪はやせ細り、自慢のブラウンヘアには白いものが多く混じっている。彼はエイリアンムーブメントにおけるカメレオンマンだ。数十年前、彼は後の多数党院内総務ハリー・リード議員と結託し、政府がUFOに関するどういった情報を持っている、あるいは持っていないかについて、互いに情報交換を行っていた。「彼はネバダ随一のレポーターだ」。リードはそう話す。「私たちは30年に渡って、このトピックについての情報を交換し合っている。そういう話題を口にするだけでバカにされていた頃からね」

ナップや彼の被後見人であるコーベルを批判しているのは、ムーブメントに懐疑的な人々だけではない。UFO信者の中にも、ラザーは嘘つきであり、ナップとコーベルが騙されていると考える人は多い。「UFOコミュニティほど、仲間同士の対立が顕著な集団はない」。ナップはそう話す。「政府は我々を潰そうと動く必要はない。放っておけば自滅するからだ」

またナップは、政府がこのUFO騒動について沈黙し続けている理由について持論を展開した。「政府は長い間、このニュースを公表すれば国民がパニックを起こし、社会崩壊が起きかねないと本気で心配していたのだろう」。彼はこう続ける。「嘘に嘘を重ね続けた結果、政府はもはや引っ込みがつかなくなっているんだ」

Translated by Masaaki Yoshida

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