エルヴィス・プレスリーの1950〜60年代、ロックからポップへの移り変わりを聴く




1958年7月公開の映画『キング・クレオール(邦題;闇に響く声)』中の曲を2曲お聴きいただきました。1曲目は先行シングルで発売されて全米1位になった「冷たい女」=「Hard Headed Woman」。そして2曲目は「Trouble」。映画の中の1曲ですね。「Trouble」は内田裕也さんのオハコだったんですね。今お聴きのように、かなりドスの効いた歌ですね。「もしお前がトラブルを探しているならいいところに来たぜ」という歌なんです。裕也さんはお好きだったんでしょうね。よくこれを歌っていたんですが、これを歌う裕也さんを観て、気持ちはわかるけど下手だよなと思っておりました(笑)。

『キング・クレオール』はジャズのメッカ、ニューオーリンズを舞台にした映画なんですね。ニューオーリンズとロックというアーシーさというんですかね、どろっとした感じがロックになって歌われるとこうなるという。これはエルヴィス・プレスリーにしか歌えない歌だなと当時も今も思いますね。主人公は酒場で働きながら学校に通う青年なんです。でもお客さんとのトラブルがあって、飲み屋で喧嘩になっちゃったりするんです。ステージで歌うことになって、それを観ていた業界の人が、君は歌手になりなさいって言うストーリーですね。お父さんへの反抗とか、どん底から這い上がっていくという青春ドラマで、これは改めて知ったんですけど、「闇に響く声」の脚本はジェームス・ディーンを想定して書かれたんだそうですよ。エルヴィス・プレスリーとジェームス・ディーンというのは1950年代後半のアメリカを象徴する2人だって片岡義男さんも書かれておりますけど、50年代のアメリカの世代の亀裂のようなものを2人が象徴していた。ジェームス・ディーンは親への反抗みたいな部分を演技で表して、エルヴィスは歌で体で表現した。この頃のエルヴィスはジェームス・ディーンがシャウトしているような感じがあったんですね。内向的な陰りのある好青年というのが当時のエルヴィスでありました。そういう歌を2曲お聴きいただきます。58年10月に発売になったシングルのAB面「One Night」、そして「I Got Stung」。

Rolling Stone Japan 編集部

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