二人が語る制作背景、コラボの成果ーところで、「Do No Why」の原曲はどんなふうに作られたんですか?黒田:最初のピアノのパートは、ニューオーリンズに2週間ステイしたとき、友達の家のピアノで半分作ったのがすごく気に入って。これを曲にしようと思ったところから始まりました。今回のアルバムは全体的にそうなんですけど、最初にスタジオでほとんどの部分を一人で作ったんです。ベースもピアノも弾いて、ドラムもちょこちょこ叩いて……音楽的にはクールでダークな、アフロ・ヒップホップっぽい感じにしようと考えてました。
ー黒田さんは『Rising Son』(2014年)から一貫してモダンなプロダクションへのこだわりを見せてきましたが、この曲は生演奏と打ち込みのバランスが絶妙ですね。黒田:これまでもコンピューターで曲作りしてきたんですけど、自分にはトラックメイカーのようなサウンドは必要ないというか、(前面に出すのを)遠慮していたんですよ。ジャズ・ミュージシャンだから、とにかく生演奏に置き換えるのが美学というか。でも、やり続けるうちにできることがどんどん増えてきて。
ー2016年の前作『Zigzagger』のインタビュー(Mikikiに掲載)でも、「そろそろプロデューサーやトラックメイカーでもいけるんじゃないか」と話してましたね。黒田:そうそう。それで今回はスタジオで作業してたら、僕のトラックを聴いたエンジニアのトッド・カーダーが「キックとハイハットはそのまま使えるよ」みたいに後押しをしてくれて、自分のプログラミングを割と残してみることにしたんです。
YonYon:最初に聴いたとき、打ち込みから作ったんだろうなって思いました。だけどトランペットやドラムなど、プログラミングでは真似できない演奏も入ってる。それぞれの良さが引き立っててカッコイイですよね。
Photo by Kana Tarumiーそんな「Do No Why」に新たな解釈を施すために、YonYonさんはどんなことを意識したんですか?YonYon:作業をしていたときはアフリカンミュージックにハマっていて。ゴム(Gqom)や
アマピアノ(Amapiano)を聴き始めた頃だったから、そういうビートを取り入れたら面白そうと思って。基本はハウスですけど、その辺りも念頭に置いて組み込んでいます。
自分が歌うパートに関しては、生音がいっぱいあるとメロディが作り辛かったので、カットするところは大胆にカットして、その代わりに新しくキックとスネアを入れ直して。自分がやりやすいように、部分的に作り変えていきました。
ー黒田さんは、出来上がったものを聴いていかがでしたか?黒田:メチャクチャ嬉しかったです。パフォーマンスも最高だし、メロディを付けてもらえたことに感動しました。実は途中で難解なコードを使っていて、ジャズ・ミュージシャンに渡したら「これなんなん?」ってすぐ電話かかってくると思うんですけど(笑)、素直に耳で聞き取りながらメロディを探ってくれて。そこに心打たれましたね。
YonYon:私は詳しくは音楽理論がわからなくて。
黒田:だから耳で拾うやん、そっちの方がいいんですよ。ジャズ・ミュージシャンはカッコつける奴が多くて、ウソ吹くのをみんな嫌がるんです。「理論から外れてるじゃん」って。だからこそ良いのにって話じゃないですか。そういう意味では、違うところでやってきたからこそ生まれたものというか。
ーまさにコラボの醍醐味ですね。ただそうなると、あの曲で歌うのは大変だったのでは?YonYon:苦労しましたね。こういう音楽にメロディを付けること自体が初めての挑戦だったので、参考になる音源も探してみたんですけど……全然見つからなくて。
黒田:すみません(笑)。
YonYon:トランペットでメロディが付いてる曲はあっても、そこに歌が乗ってる曲ってあんまりないんですよ。だから途中で探すのをやめて、何パターンも録り直しながらしっくりくるものを探っていきました。