NY発、人工呼吸器不足の深層「豚インフルエンザの誤った教訓」

豚インフルエンザの間違った教訓

2008年の金融危機の後、税収はすっかり底をついていた。市保健局の予算はその後5年間で17%減少し、2億9000万ドルも削減され、連邦政府からの助成金も大幅に減額された。

保健局の支出の中には、発達障害を持つ児童へのサービスのように法律で義務化され、予算を削減することができないものもある。そのため保健局は他のところで予算を削らねばならず、感染症対策がその犠牲になった。

2009年、ブルームバーグ市長のプラン公表以来初となるパンデミックの脅威、豚インフルエンザがニューヨークに到来した。クイーンズのとある高校で生徒数百人が感染し、市内全域に感染が広がるのではと危ぶまれた。

「もし予測通りに感染が広がれば、人工呼吸器が不足するだろう、という議論は当時もありました」と、市保健局の元幹部職員は当時を振り返った。感染拡大中に機材を購入する暇はなかったが、結局ウイルスは予想よりも早く収束した。

保健局の人工呼吸器の備蓄はごくわずかだったが、病院からの要請は一切なかった、とワイズフュース元副局長は語った。パンデミックで人工呼吸器が不足するかもしれない、という重要課題は、またもやうやむやになった。

元幹部職員によれば、ブルームバーグ市長時代後期、保健局はインフルエンザの大流行に備えて大量のタミフルを、あるいは炭疽病用の抗生物質をどう配布するかという計画にかかり切りだった。「人工呼吸器不足の問題は二の次、三の次でした」と元職員は言った。

ブルームバーグ氏のスポークスパーソン、ストゥ・ルーサー氏は「ブルームバーグ政権は全米の自治体として初めてパンデミックへの包括的な対策プランを策定しました。プログラムの主要部分は見事に実行され、2009年のH1N1ウイルス対策の際にも効果を発揮し、国の衛生緊急対策のモデルにも採用されました」と声明の中で述べた。

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE