NY発、人工呼吸器不足の深層「豚インフルエンザの誤った教訓」

準備は感染症以外にも必要

2005年、市保健局はパンデミック時にどのぐらいの物資が必要になるか把握するために、ほぼ全ての公立・私立病院にアンケートを行った。その結果、ニューヨーク市の病院にある人工呼吸器はおよそ2700台で、感染が深刻化した場合に必要な数には遥かに及ばないことが判明した。

人工呼吸器の調達・備蓄・維持にはかなりの労力を要するとプランは念を押していたが、それでも市は備蓄確保に乗り出した。パンデミックになれば国の戦略備蓄の物資は各都市や州と奪い合いになることからも、非常に重要だった(ホワイトハウス上級顧問のジャレッド・クシュナー氏は先週、国の備蓄は州が使うためのものではない、と政府のウェブサイトとは矛盾する発言をした)。

パンデミック対策プランの公表後、市は2006年と2007年に数百台の「災害用」人工呼吸器を購入した。176万ドルの契約を勝ち取ったのは、ニューヨークを拠点に展開する企業VarsaMed社だった。

VersaMed社の元CEO、ジェリー・コーテン氏は当時を振り返り、大規模なパンデミックの際にはその数だけでは足りないことを市の職員も理解していた、とProPublicaに語った。

「より大量の人工呼吸器が必要になることはニューヨーク市もわかっていました」とコーテン氏。「然るべき時に、然るべきものに誰も投資しなかったのは本当に残念です。今となっては手遅れですが」

市は2009年までに、一部の病院で新しい人工呼吸器の使い方の研修も行っていた。これは保健局が人工呼吸器を査定する目的も兼ねており、その後は将来に備えて倉庫に保管されていた。

「倉庫からトラックで一刻も早く病院に人工呼吸器やその他物資を届ける、という計画でした」とワイズフュース元副局長。現在はコーネル大学公衆衛生研究科の客員教授を務めている。「物資が集められ、あとは然るべき場所に運ぶだけでした」

だが2009年以降、人工呼吸器を大量に備蓄する試みは尻すぼみになっていった。「出来る限り不足分を補おうとはしました」と、ワイズフュース元副局長は語った。「でもそこまででした。生物テロといった別の問題の補填にも、予算を割かなくてはならなかったのです」

Translated by Akiko Kato

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