NY発、人工呼吸器不足の深層「豚インフルエンザの誤った教訓」

準備不足のまま突入したパンデミック

2015年、ニューヨーク州はインフルエンザ大流行が起きた際の人工呼吸器割り当てに関するガイドラインを改訂した。州の計算では、ニューヨーク市をはじめとする州内緊急治療施設には約7250台の人工呼吸器があり、さらに1750台の在庫があることになっていた。もしパンデミックが複数地域で同時に発生すれば、国の備蓄に頼って不足分を補うことはできないと、州も理解していた。

「州が現在備蓄している人工呼吸器の限られた数は、来たるパンデミックへの準備と、今の医療体制の維持を天秤にかけた結果だ」と報告書には書かれている。深刻なパンデミックが起きれば、「ニューヨークには緊急用の備蓄があるにもかかわらず、重篤な患者の治療に必要な人工呼吸器が足りなくなるだろう」。さらに報告書には、病院が物資の使用を制限しなくてはならなくなった場合、どの患者を人工呼吸器に繋ぐべきか判断するためのガイドラインも掲載されており、生存確率の低い患者には使用しないよう指導している。報告書には、現在ニューヨーク市が不足しているものや具体的な在庫数については記載されていない。

コロナウイルス危機に突入するときに、ニューヨーク市内の病院が持っていた人工呼吸器の数はおよそ3500台。2005年に保健局がアンケートをとったときの総数は2688台だった――確かに増えてはいるが、大規模なパンデミックで必要とされている数と比べれば、微々たるものだ。

市長は再三にわたって、連邦政府から1万5000台の人工呼吸器を補充する必要があると訴えたが、これまで市に配布されたのはたったの2500台だった。

人工呼吸器は毎日、あるいは数時間単位で交換が必要と明言した上で、ニューヨーク市では少なくともあと2500台必要になる、と述べた。「私にとって、生死をはっきり分けるもののひとつが人工呼吸器です」と市長は説明した。「救える命を全て救うのであれば、必要な数の人工呼吸器を必要な場所に、必要なタイミングで用意しておかなくてはなりません」

※この記事はProPublicaのウェブサイトに掲載されていたものです。

Translated by Akiko Kato

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