軍用機器を製造する米GE工場、命を守る従業員と利益優先の経営陣が衝突

抗議デモをするGE社の社員(Photo by Suzanne Kreiter/The Boston Globe/Getty Images)

米マサチューセッツ州リンにあるGE(ゼネラル・エレクトリック)・アビエーション社の工場では、ジェット機のエンジンやヘリコプターの部品を製造している。最も有名なのは、アメリカ海兵隊の大型輸送ヘリコプター、通称キングスタリオンにも搭載されている巨大エンジンT408だ。

品質はどれも高いが、ここ数十年少しずつ製造拠点を海外に移しており、工場の従業員も90年代初頭とは比べ物にならないほど減った。それでも従業員たちは未だ強し。彼らは今、自分の命と、我々の命をもきっと救うべく戦っている。

キングスタリオンのエンジンの他、様々な軍用部品を製造するリンの工場の業務は必要不可欠であるとして、従業員は全員出勤することになっている。だが組合によれば、従業員も次々と病に倒れている中、これまでのところ会社の対応は全く足りていない。

先日、IUE-CWA(国際電機労働組合・アメリカ通信労働組合)第201支部の組合員たちはリンの工場での持ち場で6フィートの間隔を開け作業し、無言の抗議を行った。別の従業員たちはボストンの本社前にピケを張り、東海岸地区で猛威を振るっている恐ろしい感染症の対応策や職場の安全対策が欠如している、と抗議した。

現在GEの従業員は2つの脅威に直面している。アメリカ産業を食い破るパンデミックと、労働者の保護よりも利益を優先するように作られてきた企業構造だ。そこで従業員たちは、一石二鳥の画期的な解決法を思いついた。受注が減っている工場を再編し、人工呼吸器を製造して労働者の職を守る。そして従業員たちには、健康と生産性の維持に必要な資源を与えるのだ。

GEにはすでに医療器具を製造する子会社がある。だが、リンの工場や他のGE・アビエーション支部の従業員によれば、工場の機材を改造すれば人工呼吸器を製造できるし、長期に渡って国内事業を縮小してきたので、スペースにも十分余裕があるという。

似たような闘争がアメリカ各地のGE工場で繰り広げられている。その中には、同社が発表した一斉解雇の打撃を受けたところもある(リンの工場はひとまず人員削減は免れた)。全米IUE-CWAは、人工呼吸器を製造するのに十分な生産能力と人員を抱えている工場が少なくとも7カ所あるとしている。すなわち同社には、解雇した従業員を呼び戻し、政府や全米中の医療機関が喉から手が出るほど欲しがっている製品を製造する、という選択肢が残されているのだ。

「我々はこの機会に立ち上がり……会社が今回の危機に乗じて私腹を肥やすことを断固認めません」。IUE-CWA第201支部のアダム・カジンスキー支部長は、ローリングストーン誌に宛てた声明の中でこう述べた。「従業員は何をするべきかわかっています。空っぽの工場があって、いつでも仕事に戻れる労働力があります。製造を再開して、社会が今最も必要としている製品を作ることができるんです」

Translated by Akiko Kato

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