NY発、人工呼吸器不足の深層「豚インフルエンザの誤った教訓」

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代わりに、病院は毎日の治療に足る分の在庫しか仕入れなくなった。パンデミックに備えるのとはまるきり逆行している。緊急物資はすぐ手に取れる状態にしておくべきだ、とカリューソ氏は言った。「物資が手の届くところになければ、存在しないのと一緒です」

先日、市保健局のスポークスパーソン、マイケル・ランザ氏は声明を発表し、パンデミックへの対策準備が疎かだったのは連邦政府からの支援がなかったせいだ、と述べた。

「こうしたプランでは、連邦政府からの潤沢な支援が頼りです。議会が十分な財政援助を承認しなかったがために、州や地方自治体は非常事態への適切な準備を進めることができないのです」と彼は述べた。「公衆衛生や保健医療用備蓄への連邦政府の年間援助額は、これほど大規模で広範囲にわたる非常事態に備えるには不十分です」

2006年にプランで警鐘を鳴らし、初期段階では備蓄増強の動きもあったが、デブラシオ市長のスポークスパーソン、エイヴリー・コーエン氏は「通常、人工呼吸器を備蓄するのは市ではありません。州や連邦政府が行うものです」と声明を発表した。

「我々も最善を尽くして物資拡充を図ってきましたが、これほどの規模の危機を予測することは不可能でした」

マイケル・ブルームバーグ元市長が就任したのは、2001年9月11日の同時多発テロ攻撃からわずか数カ月後だった。

プランニングを重んじる元市長は、次の危機に備えを固めようとしていた。「ブルームバーグ元市長は、沿岸地域の暴風雨、感染症の大流行、テロ攻撃――あらゆる緊急事態に事前の対策を立てておきたかったのです――そして常に最新のものに改訂し、予行演習を行うよう徹底していました」とエドワード・スカイラー元副市長は言った。

そんな折、致死的な新型インフルエンザが世界各地で流行した。2002年には中国南部でSARSが発生。2005年には鳥インフルエンザがアジア諸国を襲った。

ブルームバーグ市長時代の最初の保健局長だったフリーデン氏は、市にはパンデミック対策プランが必要だと考えた。専門家委員会を設立し、2006年7月には266ページにわたるプランを公表した。フリーデン氏は序文の中で、ニューヨーク市は「特に感染症の脅威に脆弱だ」と書いている。

プランは将来的にパンデミックが起きた場合死亡率は2%、市全体の感染率は30%、ワクチンが完成するまでの数カ月間、医療従事者や医療物資には甚大な負荷がかかるだろう、と先見していた。

Translated by Akiko Kato

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