NY発、人工呼吸器不足の深層「豚インフルエンザの誤った教訓」

賄えない維持費

2008年にVersaMed社がGEヘルスケアに買収され、ニューヨークが購入した人工呼吸器の製造も中止された、と市保健局のスポークスパーソン、ランザ氏はProPublicaに語った。「我々にはどうにも出来ませんでしたが、在庫維持の費用や実現性には直接影響が及びました」 ランザ氏の話では、500台のVersaMed製人工呼吸器の年間維持費は、バッテリーや部品交換などを含めて10万ドルを超えたという。市は結局、人工呼吸器を競売にかけることになった。誰が、いくらで競り落としたのかはわからない。GE社のスポークスパーソン曰く、市の人工呼吸器のサービス契約は2014年から2016年のどこかで失効しており、同社では現在でも、同じ型の人工呼吸器のアフターサービスを継続しているという。

病院側も、日常業務に必要のない機器や防護具の維持費を払うのには消極的だった。

過去数十年にわたり、メディケイド(低所得者向け医療保険)の支払額引き下げやその他財政的な重圧で医療業界は様変わりし、公立私立を問わず市の病院のベッドの数は合わせて数千床近くも減少した。

クイーンズのエルムハースト病院やマンハッタンのベルビュー病院など、市内11カ所ある公立病院のネットワークは常に巨額の赤字を抱えながら営業しており、近年では不足分を市の援助に頼っている。多くの貧しいニューヨーカーにとって、公立病院ネットワークは主要な医療施設だ。公立病院を利用する患者の7割近くが、健康保険に未加入またはメディケアの被保険者だ。

市は連邦からの助成金で、パンデミック用に110万枚のマスクを購入する予定だった。だが助成金が減額されたため、実際には21万6000枚しか購入できなかったことが、ニューヨーク州の会計検査員によって判明した。かかった費用は約8万4500ドルだった。

マスクについて訊かれると、保健局は「N95を大量に購入しましたが、結局使用期限切れになってしまい、予算的にも十分な量を補填するのは厳しい状況でした」 と答えた。その代わり、コロナウイルスのパンデミックが発生する前に2000万枚以上の医療用マスクを購入しており、数百万枚はすでに医療従事者や最前線で働く人々に配布されていると述べた。

パンデミック対策プランに関する質問に対して、フリーデン氏は声明で「世界のどの保健局でも、これほど深刻でこれほど大規模なパンデミックに対応するのは難しいでしょう」と答え、人工呼吸器及びマスクに関するプランがその後どうなったかについては、一切発言を控えた。

Translated by Akiko Kato

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