元ZIGGY大山正篤と手島将彦が音楽業界のメンタルヘルスを語る

─僕はミュージシャンに取材することが多いんですけど、特にアイドルの世界では、学校に行けなかったって子がすごく多くて。でもこの世界に入って、楽しいこととか、居場所を見つけたって子がすごく多い。一般社会で合わなかった人が自分を発揮できるならすごくいい場所だと思うんですよ。

手島:最近は、アーティスト本人も戦略的なことをマルチにやって売り出す人が多いという流れもあって。それもいいとは思うんですけど、みんながそれを求められちゃうと、ちょっときついじゃないですか。さっきマルチタスクとおっしゃっていましたが、それができないからここにいるんだよねって。逆に苦しくなるんじゃないかなって気もします。

大山:以前は、音楽業界も完璧な分業体制だったんです。ミュージシャンがいて、プロダクションがいて、レコード会社がいて、この3者が一体になって作品を作り、世の中に出す、お金を分配するというシステムだった。その垣根がどんどん低くなっちゃってて、ミュージシャンも、お利口になってプロダクション業務も、リリース配信も発表も自分たちでできちゃう。今なんてCDすら作らなくてもいい。それくらい、音楽を始めようってなった時にできちゃうんですよね。でも、こいつら匂いが違うよねというやつらも何組かはいて。どうしても心情的にはそういうクレバーじゃないタイプの人たちが作る音楽の方にシンパシーを感じてしまうところもあるんです。

─とはいえ、お二人のような音楽業界の内情を知っている方がいると知るだけでも、ミュージシャンにとって、かなり安心感はあるのかなと思います。

大山:僕も一応いろいろ経験はしていますので。特にミュージシャンを目指す人であったり、ミュージシャンを続けている人たちの負担かに関してはお話が訊けるのかなと思います。

手島:僕はミュージシャンをやった後すぐに裏方にいって、薄く広くこの業界を漂ってきたみたいな感じなんですけど、『なぜアーティストは壊れやすいのか』を出して思ったのが、ミュージシャンとか音楽関係者からの反応が意外と薄いんですよ。でも、全く反応してないわけではなさそうだという感じで。

大山:興味は絶対も引かれていると思いますよ。

手島:みんな薄々勘付いているし、やばいなと思っているんですけど、声をあげられないというか。中にははっきりと声をあげてくれている方もいらっしゃったんですけど、業界の人が沈黙しているのも、なんか分かる気がするんですよ。ある意味、不都合な部分もあるから。今までだったら「そんなの悩んでなんぼだよ」とか「苦しんでなんぼだよ」と根性論で押せていたところが、それでは済まなくなったのかもしれないわけなので。

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