川谷絵音が語る2010年代「ハイペースに作品を出し続けたら認知されるようになった」

川谷絵音(Photo by Madoka Shibazaki/ロケ地協力:SHARE LOUNGE)



時代を象徴するアンセムを「全部諦めたわけじゃない」

ー「文化/価値観」みたいな話で言うと、例えば、「This Is America」は社会の動きとも大きく関連していたわけですよね。もちろん、あれを日本にそのまま置き換えることはできないけど、時代の変化の中で、音楽が大きな役割を果たすこともできるかもしれない。

川谷:チャイルディッシュ・ガンビーノで言うと、俺は「Redbone」の方が好きなんですけど、ああいうのは海外の強みですよね。日本でああいうところに言及しちゃうとTwitterで叩かれて終わっちゃうじゃないですか?「This Is Japan」的な曲を書いたら、右だ左だって話になって、音楽自体が評価されるんじゃなく、逆にそれで一巻の終わりになっちゃうかもしれない。ネットって、簡単に存在を消せちゃうじゃないですか? 物理的にじゃなくて、精神的に。鬱憤を抱えた人たちが、嫉妬から手の届かない人たちをこき下ろして、簡単に突き落とせちゃう。でも、それもその人たちが悪いわけじゃなくて、そういう文化を作ってしまった全体の責任だと思うから、そういう意味でも、文化自体を変えられないかなって。誰かを批判するのも、批判する人を批判するのも全部一緒。正義感を持って叩く人も、「叩いても意味ない」に同調する人も全部一緒で、どれも正しくない。これ何回も言ってるんですけど、正しいことは全部ひふみんの日めくりカレンダーに書いてあるんですよ(笑)。「怒りを積み重ねているうちは幸せにはなれません」って。





ーひふみんが全部正しいかはわかんないけど(笑)、「それって結局同じことをやり返してるだけじゃん」っていうのはいろんな場所で起こってることですよね。

川谷:すべての痛みをわかった上でできる音楽なんてないと思うけど、そういうアンセム的なものは書いてみたいというか……夢みたいな話ですけど。でも、「This Is America」を支持した人たちがいたように……寒い話かもしれないけど、「一緒に頑張って行こう」みたいな曲があれば、何か変わるんじゃないかなって。それがどうやったらできるのかはわかんなくて、俺じゃなくて菅野よう子さんが作るのかもしれないけど。

ーその意味だと、やっぱり「私以外私じゃないの」はメッセージとしての強度がある曲だったと思います。

川谷:ああいうのをもう一回作りたいっていうのはありますね。ここ何年かはそういうタームじゃなくて、ずっといろんなことを試して、それでジェニーハイが生まれたりとかしたけど、今は自分の物差しがまた戻ってきた気がするから、またああいう曲が作れるかもしれない。俺、「どうせ変わらないし、諦めてる」みたいな発言をいろんなところでしてるんですけど、それって全部に対してそう思ってるわけじゃなくて、「変わったらいいな」って気持ちもどこかにはあるんです。実際、自分の中の世界は変わってきたし、それを広げるというか、自分の半径5mから、次は半径5kmとか、そうやって広がっていけばなって、今はそう思ってます。

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