川谷絵音が語る2010年代「ハイペースに作品を出し続けたら認知されるようになった」

川谷絵音(Photo by Madoka Shibazaki/ロケ地協力:SHARE LOUNGE)



星野源、米津玄師、ichika、ソロアーティストの可能性

ーバンドの一方で、星野源さんのようなソロアーティストの活躍も目立っていますよね。

川谷:だから、バンドはちょっと難しくて、シンガーソングライターじゃないと変えられないんじゃないですかね? 星野源さんと、あとは米津(玄師)ですよね。米津も海外を意識したサウンドで、フォロワーも出てきてる。日本だと、サウンドで注目される以上に、存在としてデカすぎるとは思うけど。

ー海外でもやっぱりソロが強くて、ジェイムス・ブレイクもそうだし、あとはやっぱりラッパー勢。ケンドリック・ラマー、フランク・オーシャン、チャンス・ザ・ラッパーとかが2010年代を牽引したのは間違いなくて。

川谷:チャンスはデカかったですよね。「音楽が無料になる」っていう、あれがストリーミングの流れを作ったと思うし、SoundCloud発のヒットが出たり。それも日本では全然で、バンドやってる人がMySpaceみたいな感じで宣伝に使うツールになってて、SoundCloudっていう文化は流行らなかったなって。だから、2010年代の海外は激動でしたけど……日本は難しい。一人で何でもできるようになったっていうのも大きいですよね。打ち込みで何でもできちゃうから、生楽器の存在が希薄になって、もちろん生の良さもあるけど、Spotifyで勝とうとするとなかなか難しい。海外にリーチする上ではやっぱりプレイリストに入ることが大事で、AmPmとかは海外ですごく聴かれてるし、若手バンドで言うと、明らかにシティ・ポップに寄せたバンドの再生回数が多かったり。日本では全然有名じゃないバンドが、日本でそこそこ人気のあるバンドよりも再生数多いとか、逆転現象が起こってて。だから、若い子がもっとSpotifyで、プレイリストとかで音楽を聴くようになって、「あれ?」ってなる可能性もあるけど……この10年の日本を考えると、それもなさそうだなって(笑)。

ーichikaくんみたいな存在もいますよね。SNSを通じて、海外にもダイレクトにすごさが伝わってる。

川谷:ichikaくんはマーティン・ギャリックスと一緒に曲作ってたり、たぶん今の日本人の中で誰よりもすごいところに行ってる一人だと思うんですよね。インスタのフォロワー有名人ばっかりで、外国人のコメントが千何百件来る日本人っていないですから。



ーピート・タウンゼントにも褒められたという(笑)。

川谷:あれとか意味わかんないじゃないですか? ichikaくんはもしかしたら変えられるかもしれない。グラミーとか獲って、逆輸入的になったら、俺も一緒にバンドやってるし、何か起きるんじゃないかなって。


Photo by Madoka Shibazaki

「いろんな音楽が聴けるから」ではなく、日本は「安いから」

ーすでにいろいろと話してきましたが、2020年以降の日本の音楽シーンは、世界との関わりも含めて、どうなって行くと思いますか?

川谷:日本人って、やっぱりオシャレさが大事で、あとみんなと意見が合わないとダメなんですよね。クラスのみんなと「これを聴いてるのがオシャレ」って、意見が一致しないとダメだから、そこが難しい。日本はみんなが拍手をしたら拍手するけど、海外はよかったと思った人が拍手する。そういう文化的、民族的な話になってきて、結局そういう部分が今の音楽シーンを作ってるから……結局何も起こらないんじゃないかっていう、その可能性も全然あると思うんですよ。ストリーミングが流行ってきてるっていうのも、日本は「安いから」だと思うんです。「いろんな音楽が聴けるから」じゃない。だから、変わってきたことは事実だけど、仕方なく変わってる感じがするんですよね。

ーなかなか耳の痛い話だね……それでも、日本のレコード会社の考え方が変わってきてるのは確かだし、ストリーミングのシェアが着実に伸びてることは、2020年代の日本にも何らかの影響を与えるのは間違いないはずで。

川谷:ヒゲダンとかあいみょんみたいに、CDよりストリーミングで市民権を得てる人がいるっていうのはありますよね。これからもっとそういう動きになってくるだろうし、みんながマスタリングまで意識して、音数も少なくなったりして……「けど」って感じかなあ。海外と比べちゃうと、どうしても。あとは、みんなコラボとかし始めて、CharaさんとYUKIさんが久しぶりに一緒にやるのも、海外の流れと無関係じゃないと思うし、俺もジェニーハイでアイナ(・ジ・エンド/BiSH)ちゃんとコラボしてますけど、ああやっていろんな人と自由に曲を作って、お互いの再生回数が伸びるとか、そういうのはこれから面白くなると思いますね。

ージャンルにしろ何にしろ、ボーダーはどんどん消えていってる。ジェニーハイはそれを象徴してるし、川谷くん自体がその象徴でもあると思うし。

川谷:あと俺は「独特な人」(川谷の新ソロプロジェクト)で何ができるかですね(笑)。あれは音楽をやるわけじゃないから、逆に何かを変えられるかもしれない。「文化/価値観を変えるプロジェクト」って、なかなかないじゃないですか? 音楽だけじゃできない部分を、あれでできたらなって。

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