indigo la End 川谷絵音が選んだ5曲と「オリジナリティ」をめぐる話

7月にindigo la Endでアルバム『PULSATE』をリリースした川谷絵音。8月29日にはゲスの極み乙女の4thアルバム 『好きなら問わない』も控える。

indigo la End(以下、インディゴ)のニューアルバム『PULSATE』が素晴らしい。ストリングスやピアノも交え、奥行きを増したアレンジメント、ファルセットを駆使した川谷絵音(Vo, Gt)の歌、「生きる」ことと向き合い、深みを増した歌詞、さらにはオリジナリティと時代感の絶妙なバランスとがあいまって、唯一無二のバンドであることをあらためて証明している。

今回のインタビューでは川谷に新作の背景について聞くとともに、「最近のお気に入りの5曲」を挙げてもらった。「洋楽的」が蔓延する日本のシーンや、ストリーミング文化の進展に伴う海外との格差に対する言及も含んだ最新の川谷語録と、ヒップホップとオルタナティヴの入り混じったなんとも「らしい」選曲をぜひ楽しんでいただきたい。

-『PULSATE』、素晴らしい仕上がりだと思います。まずはじめに、作り終えての手応えを話していただけますか?

川谷絵音(以下、川谷):そうですね……結構つかみどころのないアルバムなんですよね。2年前にリズムだけ録って、ギターと歌だけ最近録ったみたいなのが結構入ってるんで、時を超えて録ってるというか(笑)。エンジニアも変わってて、岩田(純也)さんが録りとミックスを行った曲もあるんですけど、最近の録りとミックスはほぼ美濃(隆章)さんだったり。なので、わりと寄せ集めっぽい感じではあるんですけど、今俺らがやりたいことをやったっていう感じですね。まだいろいろできるとは思うんですけど、現状ではすごくいいアルバムだなって思ってます。結構音楽的な部分が多くて、キャッチーさを削った部分もあるから、今までのファンがどう受け止めるのかっていうのはちょっとわからないですけど。



-確かに、中盤以降は曲調もわりとバラバラで、それは前作もそうだったとは思うんです。ただ、ストリングスやピアノが軸になった、アーバンでメロウなタイプの楽曲が序盤に並んでいることによって、今作のイメージを決定付けてるなって。

川谷:最近は「これやればアーバンでしょ?」みたいな感じが蔓延してるというか、これ自体死語ですけど“洋楽的なもの”をそのままやってる感じのが多くて、それをやられても参照してる海外アーティストを聴く方が絶対良いわけで、だから俺たちは自分たちのオリジナリティをちゃんと出したいっていうのはありました。まあ、俺らは普通にやるとこうなるっていうか、ストレートなものを作ろうとしても、どこかで外れて行っちゃって、それをメロディで何とかキャッチーにして、真ん中に戻してる感じなんですよね。だから、このアーバン感は他のバンドには出せない、インディゴでしか出せないものだと思います。

-順番に聞くと、まず去年の冬に「冬夜のマジック」が配信されていました。

川谷:あれはストームジーの「Cigarettes & Cush」を聴いて、男女で歌ってるのがいいなって思って、DADARAYのREISと一緒に歌ったんです。あとサカナクションって、サビがなかなか来ない曲があるじゃないですか? 「夜の踊り子」とか、サビに行くまで2回ABを繰り返してたり。俺はわりとすぐサビ行って、キチッと3回出てくるみたいなのが多かったから、ちょっとサビを焦らしてみようかなって。

-なるほど、ストームジーとサカナクションからのインスパイアだと。

川谷:そうです。まあ、ストームジーからのインスパイアだと思った人はほとんどいないと思うけど(笑)。

-4月からは「ハルの言う通り」の配信が始まりました。

川谷:「ハルの言う通り」を配信し始めて、海外の人からの反応がすごい返ってくるようになって、Spotifyの順位も日本の次がUKなんですよね。普通は台湾とか、アジアが2位じゃないですか? でも、インスタのDMとかでも「indigo la End LOVE」みたいなメッセージがUKの人から来たり、昨日もインスタに質問機能がついたんで、ストーリーをやったら、外国の人からブワーって質問が来て、それもイギリス人とか、あとメキシコ、チリ、ブラジルとかも多かったですね。

-イギリスと南米なんだ。面白いですね。

川谷:俺らのいままでの曲とはコード感がちょっと違って、あんまり日本っぽくないというか、何とも言えないコード感なので、それが受けたのかなって。なので、俺ら的には新たなスタートに立った感じがありましたね。

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