LiSAが語る2010年代「10年貫いてきたからこそ、仲間に入れてもらえた」

LiSA(Photo by Kentaro Kambe)

TVアニメ『鬼滅の刃』のオープニングテーマ「紅蓮華」が大ヒットを記録し、2019年末に「第70回NHK紅白歌合戦」初出場を果たしたLiSA。2011年にソロデビューし、『Fate/Zero』『ソードアート・オンライン』など数々の人気作品で主題歌を担当。ロックフェスでもその名を轟かせてきた彼女に、自身とシーンの2010年代を語ってもらった。

ソロデビューから10年目までの歩み

ー2011年にソロデビューしてから現在まで、LiSAさんの10年は「進化」の連続だったと思うんですよね。疾走感のあるキャッチーなポップロック、重厚かつドラマティックなロックなど、進化前の姿をどこかに残しつつパワーアップしてきたというか。

LiSA:私は(LiSAとして)デビューする前から、自分のなかでずっと好きな音楽があるんですよね。そこからアニメと寄り添い、お客さんたちと楽しみながら、「これを楽しんでくれるんだ。じゃあ、次はこういう味でどう?」っていうふうに、自分の好きな音楽を少しずつ色濃くして、味を足してきた感じがします。



ー改めて全タイトルを聴き直してきたんですけど、サウンドの振れ幅は広いのに、どの作品にもLiSAさんの遺伝子がしっかり感じられたんですよ。

LiSA:自分自身はバンドの音楽がすごく好きで、そういう生き方を夢見てきたんですけど、結果的に受け入れてもらったのはソロとしての私だった。そのことが自分の個性に繋がっていると思っていて。表向きは白だけど、反対を向いたら赤、みたいな感じでいろんなカラーを出せるし、いろんな人と交わることもできる。それがソロの醍醐味ですよね。そういう意味で、好きな人たちと関わりながら音楽を作らせてもらったのはありがたかったです。



ー多くのアーティストと交わりながら、自分の可能性を引き出すことができた。

LiSA:そうですね。しかも、尊敬している人ばかり。SiMのMAHさん、TOTALFAT、PABLOさん……彼らのような音楽は作れないし、あそこまで説得力のある演奏もできない。じゃあ直接お願いしよう、みたいな。そこから信頼関係を築いてこれたのは自信にも繋がりましたし、そのおかげで活動を続けられている気がします。

ーもっと俯瞰してみると、LiSAさんが「進化」を重ねる一方で、アニソンの世界でもたくさんの変化があったと思います。

LiSA:ただ、最初はアニソンのことを大して知らなかったんですよね。『キテレツ大百科』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『セーラームーン』の主題歌とか、『るろうに剣心』の曲をジュディマリが歌ってたなとか。その程度でした。

ーソロデビューするタイミングで、そういう世界があると知ったわけですか。

LiSA:私が最初にやらせてもらったのは劇中ソングですけど(『Angel Beats!』の作中バンド、Girls Dead Monsterのユイ役の歌唱パートを担当)、そういうものがあるのも知らなかったくらい。「声優さんの代わりにキャラクターとして挿入歌を歌う……そんな仕事あるんだ」みたいな。でも、歌っていく過程で、歌詞もサウンドも「これは作品を愛してる人じゃないと作れないな」って気づいたんですよね。アニメの内容に沿っていて、曲を聴いていると物語に没頭できるじゃないですか。アニメの音楽が愛されてきた理由がよくわかったし、そこから『けいおん!』も含めて、キャラソンの魅力に目覚めたんです。

ーアニソンのライブイベントにも行ったりするようになって。

LiSA:そうですね。お客さんの前で自信をもって歌えるようになりたかったので、「私のほうが愛してるわ」って言えるくらい、いろんなアニメを見て勉強しました。

ーもともとはバンド界隈で音楽をやってきたわけじゃないですか。そこからアニメの世界に飛び込むのはどんな心境でしたか?

LiSA:最初は不安でした。私みたいにアニメを深く知らない人間が携わっていいのかなって。でも、アニメを制作しているスタッフの方々が「この作品を作るのが夢でした!」と話しているのを見て、私はこの人たちの愛情を背負って歌うんだな、ひよってる場合じゃないと。しかも、まだ私はデビュー前だったのに、(ライブで)大勢のお客さんが待ってくれていて。自分の好きな作品、そこに出てくるキャラクターの曲を歌うというだけで応援してくれるんですよ。自分が愛する作品に関わっているから、自分たちの仲間だって無条件で認めてくれる。すごいファンだ、楽しむプロだなって思いました。

ーアニソンについては白紙に近い状態でのデビューだったけど、作品に携わる方々の情熱を知って使命感が生まれ、そこから約10年間の活動を通じてアニソンの魅力を発信してきた。そう考えるとユニークな歩みですね。

LiSA:アニソンの好きなところは、主題歌をずっと聴いてるうちに、(相乗効果で)その曲だけじゃなく作品全体まで好きになるところ。その連帯感がいいなって思うし、自分が歌ううえでも大切だと思います。だからLiSAというアーティストとしての表現と同じくらい、自分が歌うアニメにも愛情を注いで歌ってきた結果、作品とともに曲も愛してもらえるようになったと思います。

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